ご主人さまとけだま
」のレビュー

ご主人さまとけだま

小石川あお

ただひたむきに

ネタバレ
2021年9月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ はぁ、頭痛いです。泣きすぎて、頭痛いです。小石川先生の作品て、どうしてこんなに泣けるのでしょう…胸に響くものばかりです。

人に捨てられ、人を恨む事をせず、化けそこなった猫のもののけのお話です。
捨てられてみすぼらしくなったけだまを拾ってくれた千草。けだまに温かさと優しさをくれたご主人様の恩に報いたいと、一生懸命にそして健気に尽くすけだまが愛おしくて、もう序盤から泣きの体勢です。ただただ、ひたむきにご主人様の役に立ちたい、ご主人様を喜ばせたい、幸せになってもらいたいだけなんです。自分の事は省みず、千草の幸せだけがけだまの願いであって、その純粋さがたまらない。捨てられた身で、自分の幸せに望みを持たず、身の上を悟ってしまっているけだまが、切なくて、いじらしくて、胸が痛みます。それでもけだまの願いはただひとつ。涙しかありませんでした。
そんなけだまを大切に慈しむ千草が優しくて、けだまが千草に感じる気持ちを恋と知り、叶わぬものと悟る事がまた哀しくて、涙が止まりません。
心に悲しみを持つ千草にとっても、けだまが全てになっていて、生きる世界の違う二人に訪れるものは…
けだまが千草の幸せを願うように、読んでる私は最後まで、けだまの幸せを願うばかりでした。
純粋で無垢な、けだま達の愛に心が洗われる思いがしました。こんなにも深い愛があるのかと、これだから人外ものは読まずにいられません。人と人の愛とはまた違う、種を越えた愛だからこそ尊く感じるのかもしれません。
小石川先生、素晴らしい作品をありがとうございました。
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