やぎさん郵便
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やぎさん郵便

草間さかえ

極上!

ネタバレ
2021年9月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「マッチ売り」の続編。草間先生と言えば!この作品ですね。
花城と廣瀬、澤と有原。有原の手紙が4人の関係を転がしていく。マッチ売りから更に深くなるそれぞれの恋路は複雑に入り組んでいる。
4人それぞれの感情がバラバラでとても面白い。花城はまっすぐ廣瀬だけをなんの疑いもなく愛している。マッチを売っていたことがバレたら終わりと思ってるからそこに関しては必死だけど、その愛し方は自由で真っ直ぐで、やっと報われるのかと思う。笑ってるこの人が愛しくてしょうがない。
廣瀬もこんな魅力の塊のような人に愛情を向けられ大事にされたら何故自分なのかと不安になるのも当然、でもその時「愛されていると思える自信が欲しい」と願う姿は頼もしくて優しくて花城のためにそのまま変わらないでと思う。
澤は花城への叶わぬ想いに捕らわれたまま行き場の無い気持ちを持て余している。この人は本当に切ない。でも強引なおせっかいに抗議はするものの受け入れてしまう有原に救われたと思う。言葉と態度とは裏腹の優しさが報われるのが嬉しい。
有原は全て悪い方へ向かう自分の行動にうんざりして廣瀬の事も諦めようとしたけど、その元々持ってる洞察力で澤の優しい所良い所全部見えている。自分の悪運に囚われて気づけなかったけど、徐々にクリアに見えていくにつれ2人の関係が変わっていく。
きっかけは1枚の手紙。でもそれまで花城と澤が当たり前だと思ってた生活は出口のない迷路みたいなもの。
それが動き出し徐々に見えてくる進むべき道を、たった1枚の手紙を軸に描き切られているのは本当に凄い。感動します。
草間先生の描かれるイキイキした表情のキャラクター達も大好き。出てくる食べ物もどれも美味しそうなんです!
戦後の時代に生きる彼らの明るさ、どこまでも前向きなラストに読んで良かったと心から思います。
これで200レビュー!
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