どう考えても死んでいる
」のレビュー

どう考えても死んでいる

雁須磨子

たった一人の存在を失いたくないという想い

ネタバレ
2021年9月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 目黒晋太郎は名前を呼ばれ、気が付くと何故か駅のホームにいました。どうやら自分は死んでいるらしいとわかります。 また声がして、晋太郎は恋人の翼の元へ飛んでゆきます。翼は、晋太郎の霊が降臨していると信じて、怪し気な霊媒師に高額な料金を払っていました。その時から晋太郎は翼のそばで暮らし、自分を想い続ける翼の目に触れたいと願います。再び件の霊媒師が訪れた時、なんと翼は、呪術で晋太郎を霊媒師の中に封じ込めたのでした。肉体を得た晋太郎は、翼と話をしたり食事をしたりできるようになりますが、元の身体の持ち主である霊媒師も内在しており、折々に話し合う中、翼の様子がおかしいことに気付きます。
最初に怪しく思った霊媒師が味方になり、次に大切な恋人を不審に思い、さらに怪し気な元締が現れそれもまた…と、くるりくるりと登場人物の立ち位置が変わります。物語後半、二人が元から持つ属性が明らかになり、強烈過ぎる闇属性に苦しんできた翼と、それを引きつける強い光属性の晋太郎、それぞれの属性と相手への執着が描かれ、希望の仄見えるふんわりとし終わり方をします。輪廻から外れてただ二人、寄り添い続けるという、想像の範疇を超えた不思議な純愛物語でした。
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