チ。―地球の運動について―
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チ。―地球の運動について―

魚豊

チ。は地球の地か、知性の知か?

ネタバレ
2021年9月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読むにつれ、涙があふれる‥‥。
人という未熟な生きものの、
もうどうしようもない美しさ。儚さ。

今ではあたりまえの知識である、宇宙の法則、
「地動説」をめぐる、異端の学者たちと市井の人々の物語。
天動説が唱えられ、異端思想は焚刑であった時代に、
真理に向かう人々の情熱を描いています。
年齢も性別も立場も関わりなく、
何かを愛する人は、たぶん心を打たれる作品ではないかと思います。

激しい事件はなく、主人公も、たぶんいません。
あるとすれば、「時代」と「知性」ではないかと思われます。

テーマの割に、壮大なスペクタクルもありません。
むしろ、偶然関わってしまった人たち各々の
小さなドラマ、きっかけという体で描かれていますが、
けれど、それは現代の私たちに繋がっている。
この地球の真理に繋がっています。
なので、真理を知り、守ろうとする人々の、思いが、
まるで自分の事のように心を打ちます。

そして、要所、要所に散りばめられた、登場人物たちの言葉が美しい。
ハッとする言葉にいくつも出逢いました。

渾身でお薦めします。
科学的なものが嫌いでなければ、ぜひ読んで欲しいです。

余談ですが、個人的にはいつか、海外で実写映画化して欲しい。
クリストファー・ノーラン監督のような方に、ぜひ。
それほどの名作だと思います。

※たった今、読み終わったので、少々興奮しました。長文失礼致しました。
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