やさしくおしえて
」のレビュー

やさしくおしえて

井戸ぎほう

兄弟sよ、君たちのこと大好きだよ。

ネタバレ
2021年10月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 兄弟なのに、何で平等じゃないの?って思っちゃうよね。
分かるよ、突然”お姉ちゃん”になって、お姉ちゃん(私)はダメだけど妹は良くて、他にもいろいろたくさん…。ずるいよって私も思ったよ。
そこからの、「~宝物~」までの流れ(気付き)が良すぎて、ここで終わっていたとしても、「なんて素晴らしい短編なんだ」と満足できたと思う。
けれど、嬉しいことに、お話はまだまだ続く。最初は、弟sの話なのかな~、兄弟×幸生の話なのかな~って思っていたら、兄sのお話へ。
光も東村兄も面倒くさいなぁ。でも、分かるよって思う、兄sのその微妙な心情。
この2人の考えていること、言っていること、やっていること、全部、ただウダウダモダモダしているようでありながら、そうではなくて、とても丁寧に内面が表されていて、「分かるよ」じゃなくて、作者様の技法で共感させてもらえていると言う方が正しいかもしれません。
東村兄の告白後、会わなくなった2人のモノローグが、それぞれ胸に迫ってきます。
そして、光と聖兄弟のやり取り。うん、本当は私も分かってた。弟(私的には妹)にだって思うところはあるということ。
その場面を経てからの光と東村兄へのシフトチェンジ。光の決意を表すトラテープが可愛すぎて…作者様、上手いなぁと感心しきり。
光が東村兄をベッドの上に引っ張り上げてからの言葉だけでなく、視線の流れや絡む指や回された腕が、何とも言えず、グッときました。すごく幸せな時のはずなのに、どうして2人とも少し切なげなの?って少し考えて、あぁ、自分が誰かの宝物になっちゃったときって、きっとこんな感じなんだなって、ストンと腑に落ちました。泣きそうになってしまうくらいの気持ちがあふれるよね…。感動で私の胸もいっぱいになる。
アフターストーリーも最高で、冒頭から心つかまれました。女の子にはあんなにあっさりだったのに、一つずつ一つずつやさしく教えてあげて…なんて健気なんだよ…。「好き」はこんなにも人を変えるのか…。からの事後…可愛すぎる…。
さらに、弟sの描き下ろしが良かったよ~。宝物エピが生きてる。「おーい!聖ヘタレかよ!」とツッコんじゃったけど笑。幸生が可愛すぎると思っていたのに、この流れはもしや!?幸生が上なのか!?見たい!けれど、作者様、今は描かれていないのでしょうか?まだまだその世界を読みたいと思う作者様。他2作を読み返そう。
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