コントラスト
」のレビュー

コントラスト

itz

lastが秀逸

ネタバレ
2021年10月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 雰囲気もグループもまったく異なる翔太(かなた)と陽(あきら)、大ボリュームで丁寧に描かれる男子高校生の恋でした。
まず、エロはないです。でも満足感がハンパない。
ページ数もさることながら、内容が素晴らしく良い。
他所の作品に例えたりするのって作者さんに失礼かもしれないけれど、同級生を読んだときの感覚に似ている気がします。
最後の最後で二人がようやく付き合うことになってから出てくる、陽のトラウマになっている元友人の話がとにかく秀逸でした。
私事ですが、BLに出てくるやたらと寛容で理解力の高い周囲の人間にいつもどこか違和感を感じていて。創作の世界なのでそれはそれで好きだし、創作だからこその優しい世界でもあると思うんですけど、やっぱり自分の身近な人に同性が好きと告げられたら口では何とでも言えるけれど、多少は戸惑うと思うんです。
陽のトラウマとして登場する彼はそんなリアルを最も最悪な形で体現してくれていて、よくある話をよくある話で終わらせないでいてくれてます。
彼は永遠に陽のトラウマのままで、それを後悔しているのに自らが楽になる道を選ばなかったことがとても印象的でした。
新しくてそれでいて人間らしくて、あんなに嫌いになれない嫌なやつ、初めてだなぁ。というか、嫌なやつじゃないんですよね。どこまでもヘテロで、いい人。だからこそ親友を失って傷ついたのだろうし、やり方は最悪だったけれど、距離をとったのだと思います。
ひとつ気になる点をあげるなら、陽の兄と元家庭教師のその後が気になりすぎる(笑)
あのふたりってどこかで描かれていたりするんでしょうか……?
男子高校生ふたりが徐々に距離を縮めていって恋をして、という過程を丁寧に描いた作品なのに、ふたり以外の登場人物がとても魅力的で、なんだかそっちの方が印象に残ってしまっていて……すみません。
でも総合的な満足度は文句なしの⭐︎5なので、それだけ「人」を描くのが上手ということなんだと思います。
いやでもやっぱり兄と元家庭教師、気になるよ〜!笑
いいねしたユーザ13人
レビューをシェアしよう!