大好きな妻だった
」のレビュー

大好きな妻だった

武田登竜門

知らないままだったら?

ネタバレ
2021年10月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ レビューで知った作品です。ありがとうございます。
一読目、ただただ涙があふれました。読み返して、ハッとしました。これ…旦那さんが知らないままだったらどうなった…?と。同じように思われたレビュアーさんもいらっしゃいますね。(以下、完全に設定バレしておりますのでご注意を)
きっと、奥さんの思惑通り、彼の心は奥さんから離れ、亡くなったことに対して、少なからず安堵したかもしれません。けれど…、きっとその後の展開は、必ずしも奥さんの思うようにはならなかったのではないかと思いました。
亡くなった瞬間はホッと肩の荷を下ろし、あるいは、しばらくは、辛く当たられる日々から解放された気持ちの軽さを感じたかもしれません。でも、きっと日が経つにつれ、奥さんを愛していた日々、奥さんに愛されていた日々を思い出すと思うのです。物や場所や匂い、それらを通して、彼女と過ごした幸せなときが、ぶわっと蘇ってくると思うのです。そして、きっと後悔すると思うのです。もっと何かできたんじゃないか、優しくあれたんじゃないかと。はたから見れば、彼は十分に尽くしたと伝えたいところですが、気持ちの折り合いをつけるのは本人にしかできなくて、この短い作品の中でも分かる彼の内面からすれば、ササッと切り替えて、残りの人生を楽しく生きるなんて難しかったと思います。だから、ただただ、気付く場面があって良かったと、そう思いました。
私は、彼女のようにありたいと思っていました。その気持ちは変わらず、私のことなどさっさと忘れてほしいと思っています。でも、この作品を読みながら、その伝え方をどうしよう…と考えました。それに、必ず「さようなら」が言える別ればかりでないことも知っています。伝えたいときに伝えられる保証はどこにもないのです。だったら…やっぱり、何気ない日常こそが、かけがえがないなと思い至ります。
本当に胸を打つ作品でした。35ページに込められた想いは、きっと、私の中に残り続けると思います。出会えて良かった。改めて、感謝です。
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