ラムスプリンガの情景
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ラムスプリンガの情景

吾妻香夜

心地よいほろ苦さに酔いしれる

ネタバレ
2021年10月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ 身近ではない文化を背景に、運命の出会い、禁断の恋、葛藤と別れ。からの結婚式に乗り込みそのままバイクで夕日の彼方に消える。という感じの定番ド王道を真剣に描きたいと先生は仰っていましたが、アーミッシュ( 敬虔なキリスト教徒 )のラムスプリンガ( コニュニティに残るか故郷や家族を捨て外で生きるかを決める為、俗世を体験する期間 )という純粋でありながらも足枷をつける残酷とも思える生き方に定番王道を遥かに凌ぐお話に感じました。
恋を「 素晴らしい呪い 」というクロエの視線の先に彼女は何を見ていたのだろう。怒りでオズにキスしたダニーの心情もとても興味深いです。
彼等も規律に囚われ、何かを得るために何かを捨てる決断。
その中で素晴らしい呪いの正体に囚われず、オズと共に生きる覚悟のテオの瞳に魅入られます。
可愛くて優しかったテオが、愛を知り自分で選び自らの幸せを掴み取る強さに哀愁のようなほろ苦さを感じます。
スピンオフの親愛なるジーンとはまた違いますが、やはりアーミッシュのラムスプリンガという特殊な文化を先に知るという意味では此方から読んだ方が入りやすいかも知れません。
読み返してみて、新たな発見や解釈に気づき、やっぱり興味深く面白いと思える御本。
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