このレビューはネタバレを含みます▼
皆様のレビューを拝見し「読んでみたい!」と即ポチッ。672頁とあったので覚悟を決めて読み始めたら、瞬く間にこの世界観に引き込まれ一気読みしていました。
タイトルにある「アレキサンドライト」とは、昼と夜の光の変化によって表情を変える不思議な宝石のこと。この石は、太陽の下ではエメラルドのような緑青色の輝きを放ち媚びない凛とした気品ある表情を見せ、夜の室内灯の下ではルビーのような赤紫色の情熱的で妖艶な色香を見せる特徴を持つのだそう。主人公シュリルがまさにアレキサンドライトのような神秘的な御仁として描かれ、だからなのか数奇な運命に翻弄されてしまう展開に魅入ってしまい目が離せなくなりました。
全体を通してシュリルが陵虐・蹂躙される描写が多いため、苦手な方はご注意ください。ただ、目を背けたくなる場面でも何故か嫌悪感はなかったです。もしかすると、作品全体に漂う繊細で美しい文章・表現力に圧倒されてしまい、その行為さえも美しく感じてしまったからかもしれません。そう考えると、ストーリーというより「美」を堪能する作品と言えそうです。
ちなみにストーリーは、美しい貴族シュリル、漆黒の目と髪を持つマクシミリアン大佐、自国の戦将軍ラモンの3人が交差する愛憎の物語。あぁ、語彙力‥。
シュリルの瞳に切望の色が表れたラストに安堵と感嘆のため息が出て、くどいですが美しい文章に酔いしれました。素敵な作品に巡りあえて嬉しかったです。