ビッチなスズキくん
」のレビュー

ビッチなスズキくん

重い実

最後のワンカットに全てが集約されています

ネタバレ
2021年10月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 星は多いけど重そうな内容だったので試し読みして終わりかなと思いましたが、読める所まで読んだらどうしても続きが知りたくて久しぶりに即ポチりました。レビューの多くに「重い」とありましたが、確かに重い。主カプと店長カプのどちらも重いです。更にどちらも裏社会やらネグレクトやらの闇もあって、それぞれの立場に置かれているスズキくんや店長が不憫でなりません。「重い」「辛い」「切ない」という感情が主なのに、それでも読後は悲しいながらも爽やかな気持ちになりました。ラストシーンまで「スズキくん」「須崎さん」と呼び合っていた二人。スズキくんは「追いかけっこは終わらないまま…私の勝ちです。」と言っていますので、須崎がスズキくんを想い続けたのは分かりますし、その事が分かるだけでも素敵なラストで満足していたのですが、そのシーンが印象的すぎて何回も見ていて気がつきました。スズキくんの左手薬指にリングがあることに!!確かにその後の回想シーンで須崎が「書いてもらいたい書類がある」とか「家族になる」とか言っていたので『結婚』は予想できます。カナダ(同性婚が認められている国)ですしね。でも、あくまでも予想でした。それを言葉や文字で出さずにワンカットの画で知らせるなんて…魅せ方が素晴らしいです。二人は40年間変わらぬ(須崎がスズキくんを追いかけるだけの)関係だった訳ではなく、変わらぬ気持ちのまま『結婚=家族』という関係になり、スズキくんは本当に幸せになれたんだなと、胸がいっぱいになりました。左手薬指のリングに気付けて良かったです。読後の幸福感が増しました。重い重いと言われているのに全然嫌な気待ちがしないのは、そこに強く深い愛情があるから。最後のワンカットに幸せの全てが集約されている、本当に素晴らしい作品だと思います。読んで良かったです。気づいたら食事を摂るのも忘れて読みふけり即レビューを書いていました。
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