シャングリラの鳥
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シャングリラの鳥

座裏屋蘭丸

ハマると抜け出せない座裏屋ワールド

ネタバレ
2021年11月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 南国に佇む男娼の館『シャングリラ』。客にとっても、男娼達にとっても身も心も満たされる楽園。客につく前に、男娼達の気分も身体も盛り立て、ケアする男達を試情夫と呼ぶ。館の3つのルールに従い完全に割り切って楽しむ事が出来るならいいけれど、身も心も自由に解放して欲しい気もします。そこへ新しくやって来たストレートの試情夫アポロ。そして、アポロに興味を持った男娼フィーは…
もうこの世界観がたまらない。一瞬にして心を奪われてしまう座裏屋ワールドです。出会ってしまった二人の運命が動き出す。今作品は『手』がキーワードとなり、要所要所でその手が読者の興味をそそります。ストリートチルドレンだった頃の深い心の傷を持つフィーの地雷が苦しい。客に引き渡され背中を押す『手』、地獄から逃れる為にフィーが押す『手』。忌々しい記憶がフィーを苦しめます。フィーの心が救われて欲しい。
そのフィーの専属の試情夫となったアポロは、一線引きながらも心が不安定なフィーを放って置けないんですよね。荒れるフィーを押さえる手。引き寄せる手。優しく髪に触れる手。あぁ、なんだろう。緊張感漂う展開にドキドキして、二人の距離感にドキドキして、心が穏やかでない。甘えを見せるフィーは、アポロに心を許しているようで、逆に反しているようで…
一方のアポロも一線を引きながらも、不安定なフィーの心に心を寄り添わせているようで…それは、一体なんだろう。恋と呼ぶにはまだ遠く、フィーの身の上に同情しているようでもない。この表現しがたい、まだ何の形にもなってない二人の関係が、読者の期待感を一番煽るのかもしれません。もぉ、ワクワクします。
二人の関係の変化にウズウズとする。愛されるより愛したいアポロが本気になったらどうなるんだろう。フィーの身も心も、アポロの情熱で、その手で、その身体で溶かして欲しい。きゃーっ、興奮。心から愛し愛される喜びをフィーに知って欲しいし、幸せを感じて欲しい。仕事ではなく、ただ惹かれ合って、求め合う姿が待ち遠しい。美しい先生の絵は、引き締まった肢体が美しすぎて目が離せません。ほんとに芸術です。
そして、謎めいた怪しい影。サスペンス的な要素も加えて、さらに引き込まれます。もぉ、とにかく面白いんです。
分冊版で3巻目が配信されていますが、座裏屋作品は一気に読みたいので我慢、我慢。あぁ、気になる。でも楽しみにとっておこう。
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