7SEEDS
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7SEEDS

田村由美

どうか諦めずに最後まで読み進めて下さい。

ネタバレ
2021年11月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 壮大なスケールのファンタジーと言えば、私は迷わず田村先生のお名前を挙げる事でしょう。
『BASARA』に魅了された若き時代、そしてこの歳になり、現在連載中の『猫MIX幻譚とらじ』『ミステリと言う勿れ』に夢中です。どれも出会えて良かった素晴らしい作品ですが、この作品もその思いはひとしおです。正直、超ロングランの大作と言う事と、サバイバル物語に手が伸びずにいました。それは、私の大きな過ちで、決して大げさではなく、この作品を知らずして通りすぎる事は、自分にとって名作知らずの不幸なヤツだと思えました。読んで良かったと、心の底から思います。今、読もうかどうか迷っていらっしゃる方、心が折れそうで途中で断念しそうな方、どうか、どうか諦めないで下さい。
確かに、辛い事が山ほどあって、私も何度も心が折れました。でも、作品の中の登場人物たちが絶望の中にいながら、決して希望を捨てないように、私も光が射す事を信じて乗り越えました。
理不尽な命の選択。軽んじられる命があってはいけない。死に逝く人々の無念と、残された仲間たちの悲痛な思いが胸をしめつけます。極限の状態の中、助け合って、支え合って、生まれる絆がどれほど尊い事でしょう。涙が乾くと、また涙の波が訪れます。誰かを思いながら生き、誰かのために自身の命をかけて守り抜こうとする強さ。言葉になりません。人と人との間に生まれる絆も然り、そこに生き抜く動物との絆さえも素晴らしいのです。まさしく人間愛なのです。誰かを失い傷ついた心が、ずっと彷徨いながら生きる事は、自分が死ぬ事よりも辛いのかもしれない。その傷ついた魂が、人の強い思いで救われていくのも、また涙。泣いてばかりです。
辛いとか、哀しいとか、そんな事ばかりではなく、絆が生まれると同時に、恋や愛が生まれてゆっくり育まれていく事が、何よりも楽しみでした。恋も愛も、明日への希望なのです。誰と誰がそうなるのかは、見てのお楽しみです!
非情な心の人間だと思われる人たちの心の変化も見所です。それもやっぱり人間愛ゆえで、そんな変化が嬉しいんです。
また、消え逝く命ばかりではなくて、生まれて来る命に一番感動しました。この感動は忘れられません。何もない世界の中で、強く生き抜いた人々に囲まれて強く育てられる事でしょう。
田村先生の作品は心を掴んで離さない。素晴らしい作品をありがとうございました。心から御礼申し上げます。
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