今宵おまえと
」のレビュー

今宵おまえと

木下けい子

作者様の好きな物てんこもり。私も好きです

ネタバレ
2021年11月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ ★営業職のリーマン陸郎と流通販促部勤務・保孝の10年越し親友ストーリー。

★1年ぶりの再会。陸郎は高校生の頃から密かに想いを寄せる保孝から信じられない言葉を聞く。「会社の男の後輩とやっちまった」。男同士だから、親友だから、お前が結婚して幸せになる姿を見守る覚悟をしていたのに…きっかけもチャンスもあったのに、俺は…。

★数十ページで、保孝の無神経さが分かって、3巻分の陸郎の前途多難さを想像しました。後輩の本気を分かっていながら、酔った勢いで同級生たちに笑って話せてしまう。陸郎はこんなタチの悪い男に10年も片想いしているのです。予想通りの陸郎の葛藤と、予想外の保孝の葛藤がぐるぐる渦巻いています。もっとスパッと決めなさいよ!と思ったりもしますが、このどっちつかずな気持ちや切なさが「恋」だなぁと妙に納得できてしまいます。2人にも、後輩くんにさえ、それぞれに共感できてしまう。男同士であること、親友であることを真剣に考えるからこそ繰り返される問いと不安が、じれったくなるくらい丁寧に描かれています。陸郎の想いがいったん叶ったときの喜びと(保孝視点の「泣かなかった」にはグッときました)、簡単ではない親友から恋人への関係性の変化。そこで「キモイ」は言ってはダメ。言った意味と受け取った意味は違うけれど、保孝をグーパンチしたくなりました。でも、殴られてしまうのは陸郎。理不尽だなぁと苦笑が漏れます。惚れた方が負け。恋は時に不公平なのです。でも、作戦勝ちなので、引き分けですね。

★3章それぞれ描き下ろし含めて、162.162.186ページ。2人のじれじれもだもだを堪能できます。サラリーマンが真剣に恋に向き合う姿がいいです。高校生の2人も可愛かったです。

★陸郎がヘンタイだと見抜いている後輩くんが結構好きでした。彼にも幸あれ。
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