ショーが跳ねたら逢いましょう
」のレビュー

ショーが跳ねたら逢いましょう

えすとえむ

芯から痺れました。

2021年11月15日
なんて洒落た表紙だろう…騙し絵みたいな内表紙だな…とこれからどんな物語が始まるのか、開幕を待つようにワクワクしました。
表題作の前日譚『カーテンコール』を読みながら、Se-Po(ウクライナ出身のダンサー)を想いました。モデルにしたのかな?と思ったけれど、彼がロイヤルの史上最年少のプリンシパルになったのは2010年、この作品が描かれた方が早いですね。
パパラッチされた後の2人のやり取りが、それはそれは小気味よくスマートで、さすが演じ手だなと思いました。芝居がかったことが無意識になり、楽だとさえ感じる彼らの本心は、行方知れずになっているのかもしれません。
テオが躍るカルメンを見たダレンは、彼の情熱と苦悩に触れてしまったのではないかと思います。
情事のあとのシーツをまとうシーンにさえ、テオの属性を感じ、ダレンはそこでシナリオの結末を書き終えたのかなと思いました。テオが本当に解放されるには躍るしかないと、ダレンは気付いたのだと思います。だから彼のホセはカルメンを殺さない。
本当に、最後の最後まで、隙なく洗練された大人のストーリーでした。
他作品(短編5話)もとても好きでした。『nero』と『モノクローム』は、ダメですね…泣けてしまいます。無常の余韻がいつまでも残ります。
唯一の日本が舞台の『ひぐらし、油照りの路地』、美しい祇園の夏と切ない心象風景に酔いました。
フォローさんのレビューでずっと気になっていた作者様で、ようやく読めました。心惹かれる作者様の一人となりました。
いいねしたユーザ15人
レビューをシェアしよう!