このレビューはネタバレを含みます▼
綺麗で少し儚げな印象の絵と、切なく不可思議なストーリーがぴったりとあった作品でした。
知らない番号からの電話にでなかった博生。その日、兄が亡くなった、というところから物語が始まりました。兄直生の遺品整理を頼まれた博生は、嫌々向かった兄のアパートで、亡くなったはずの兄と出会います。向日葵を抱えた笑顔の兄に。歳が離れ、吃音もあり、早くに家を出、男性と暮らす兄に、親しみも愛情も特に無かったはずの兄に。
人の想いは必ずしも伝わるものではありません。そして、伝わらないもどかしさから、すれ違いが深まってしまうことも少なくありません。大切な人だからこそ、そうなってしまうことがあるのではないでしょうか。この作品は、大切な人たちに伝えたかった、沢山の直生の想いが起こした奇跡の物語です。
何故、亡くなった兄が現れたのか、何故時が過去に戻っていたのか、何故あの日番号を知るはずのない兄から弟の自分に電話がきたのか、何故、何故、何故、沢山の何故に包まれて物語は展開し、互いの想いが触れ合い始めます。向日葵のようでありたい、という直生の言葉に涙が溢れました。
切なく、綺麗で、健気で、優しく、力強く儚い、直己の抱えた沢山の想いが心に染み込んでくる、悲しくて温かい物語です。言葉に表れない愛情に包まれて、しばし浸ってみたくなりました。