美しい彼
」のレビュー

美しい彼

凪良ゆう/葛西リカコ

4巻のブレイクスルーは必読

2021年11月20日
読む幸せ、文字をたどり紡がれる物語の真っ只中に落とし込まれる喜び。
4巻レビューの追記に同じ言葉を捧げたい。4巻電子が出る日を待って待って、待った甲斐あり期待以上で涙が止まりません。清居から平良のターンになる4巻、前半笑って後半涙が止まらないんです。レビュー書いてる今も。
最新刊の平良の中に、凪良さん自身が宿っていてどうにもできないくらい切り離して読むことができなかった。清々しいくらいにやってくれた!上手い。テクニックの上に書く側の楽しささえ伝わる。
表現者としてさあ次をどう描くの?本当に書くことが好きなの?これから先どうしたいのどうなりたいの?
平良の自問はずっと作者自身の問いでもあったのではなかろうかと。作家の手で紡がれた世界は作家に還る。でもこんな形でそれを読める幸せは本読みにとって非常に稀なこと。「清居会」も「アヒル隊長」も「野口師匠」も「恩田」だってもう私たちの中では実在してるしその世界にいられる時間はこの上なく愉しい。でも4巻はそれだけじゃない。平良の喜び、不安、迷い、決意の中に作者自身が突き抜けて感じられる。それに心動かされてしまう。
1人の作家を複眼で観ているかのようでした。すごかった。

全力で楽しい。この時間が永遠に続けばいい。そんな風に願いながら読んだこのシリーズ。
「美しい彼」シリーズ第1巻は平良と清居の高校生編です。
平良の苦しい日常に刺さるように現れた光、清居。
いじめの対象にされる平良の独白がこれでもかと入り込んで来て苦しい。
高校生編では完全に平良と自分が同化してしまって、平良という男を全く客観視できない。
平良が清居を自分の神だと認識してからの世界の変わりようが痛快で。只々平良の心が清居の王国に捕らわれ変わっていく、世界の扉が開いていく様に心震えるんです。
視点が清居に変わってみて初めて平良という男がとんでもなく気持ちの悪いスパダリ(?)だとわかってくるのですが、何しろそこに至るまでが平良と同化しすぎてヤバい。
えちなシーンはともかく、この高校生編は全国の少年少女にオススメできる。それほど平良の居心地の悪い学生生活の描写に優れています。
ああ、出会ってしまった。
これまでがB.C.凪良ゆう先生。
これからは?
虜ですよ。きっと全作品追いかけるんです。
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