君が僕のすべて
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君が僕のすべて

西田東

大人の男性の不器用さが可愛く見える不思議

ネタバレ
2021年11月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ カフェで紅茶を飲む鍋島司は、仕事もお金も無く彼女にも去られたものの、厚い雲の向こうには太陽が輝いていると自らを鼓舞しています。そんな時に出逢った大人な女性•和美を新たな太陽にと一歩を踏み出したのですが、和美はアメリカで成功した武田剛史の妻でした。鍋島の履歴書に驚いた和美は、とりあえず鍋島を引越したばかりの自宅の片付けに雇います。鍋島が和美に気のあることを知る武田は、鍋島にキツい態度をとりますが、鍋島は真面目さとポジティブさで仕事をこなしてゆきます。高校中退で渡米し成功した武田は、子供を残せないこと、ストレスによるEDとで余裕を失っており、さらに和美が実家に帰ってしまいます。和美がいなくなっても何故か武田の下を去り難い鍋島は、やがてそれが恋なのだと自覚するのでした。
キャラの造形が深いです。武田は学歴や男性としてのコンプレックスを持ちながら、成功するだけの人たらしとも言える素直さ可愛さを持っています。仕事も無く彼女にも捨てられ、せっかくの学識も持ちあぐねている鍋島は、考え方や行動に真っ直ぐな育ちの良さが窺えます。それぞれのプライドや迷いの中、なかなか寄り添えない二人が、お互いがそばにいることを自然と受け入れるようになるまでの過程が描かれます。
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