このレビューはネタバレを含みます▼
7つの恋の短編集なのですが、どれもこれもショートムービーを撮って欲しいくらい素敵です。ヤマシタ先生の独特な感性が光り、言葉のチョイスだとか表現の仕方がThe YAMASHITAって感じです。
前半3つは片恋の想いを伝える方法が、間違って先走った行動になってしまってる男の子たち。傷つけられた恋心を忘れたいのに、忘れられない男の子。などなど色々な恋の形があるのですが、どれも共通して『ただ君が好きなだけなんだ』と言う想いがひしひしと伝わって来て良いんです。これから、二人の関係が変わってスタートするんだなぁっていう余韻が心地良いですね。『こいのじゅもんは』が良いですよ。
『食・喰・噛』は片恋の終わりを迎えた時、恋を失くした男の哀しみも切ないけれど、結婚を告げた男の涙も妙に切ない。その涙の真意はどこにあるのか……加保も城尾も幸せになれ~。
一番好きなお話は表題作です。これはとても良く出来てるし、面白かったです。カフェの3つのテーブルの客たちに起きる出来事が、次々に連鎖して行くのが絶妙で面白い!それぞれのテーブルの会話が聞こえて来るので、それに反応してしまう店員や客たち。思わず聞き耳を立ててしまいそうな。『心はひとつ』に笑ってしまいました。上手い具合に違うテーブルの会話に偶然会話が被ったりとか、ホントに面白い。店員さんのフォローも抜群だし、このカフェの現場に居合わせたかった。そして、生まれた恋に拍手喝采でした。そう来たか。お見事です!めっちゃ好き。うぅ~…みんなのその後が知りたい。とても知りたい。でも、余韻を楽しむのがヤマシタワールドの醍醐味なのです。
ゲイのお兄さんと近所の女の子の交流も良かった。恋の魔法にかかって縛られ、別の魔法で解いてあげたい。『お母さんの魔法』が温かく優しいな。
駅のプラットホームや改札口では、ドラマがある。出会いや別れ、他人のドラマを見てきた駅員(運転士?)に起きた恋のドラマも良かったです。伝えられない恋から逃げて故郷は遥か…思わぬ再会にドラマあり。あぁ、どうか今度は逃げないで…その後が気になるけれど、また会って何かが動き出すと願いたい。
はぁぁぁ…良かったです。めっちゃ良かったです。レビュー数が少ないですけど、オススメしたい。