耳鳴りとめまいと悪寒について【SS付き電子限定版】
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耳鳴りとめまいと悪寒について【SS付き電子限定版】

湖水きよ

しびれますよぉ。

ネタバレ
2021年12月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者様買い。こちらの作品と『夜を走り抜ける(1巻)』共に、9日までセール中です。フォロー様、フォロアー様方が続々とレビューされていて、嬉しい~。
父親の借金を背負いながらも、残された古本屋を守る真名と、借金の取り立て屋の赤羽根の救済物語です。真名は特殊なサイコメトリーの能力を持っていて、それを知った赤羽根がその力を利用しようとして…
この二人の纏う何とも言えない空気感に引きつけられます。それは、相手を深く知らないけれど、無意識な感覚の元で魂が呼び合ってるような…なぜかわからないけど互いに引き寄せられる空気感を放っている印象でした。そして、互いにそれぞれの境遇を知る事となるのですが、同じような身の上でわかり合える感情を持ち、足りないものを埋め合うかのように、惹かれていくのも不思議じゃないですね。ただ赤羽根は、『誰にも必要とされないならば、自分も誰も何も求めない、必要としない。』という哀しい思いを子供の頃から持ち続けてる事が辛すぎます。それは真名にも言える事で、そんな思いを知っているからこそ、惹かれながらも牽制しているように見えて、それもまた辛いのです。
親に捨てられたというトラウマは、大人になっても苦しめられる一方で、それでもやっぱり何処かで親の愛を探してしまうものです。愛された記憶を探し求めるからこそ、父親の古本屋を守り続け、母親の気持ちを探るような事をしたのかなと。親の愛情を乞いながら、気持ちを絶ち切るためのけじめをつけた赤羽根が哀しかったです。二人は共に、無意識下で愛情を求め続けていたのかなと思いました。だからこそ惹かれ合ってしまう。本当は誰かの必要とされたいし、必要としたいんですよね。欲しいものはただ一つ。
二人が身体を重ね合い、求めて止まない気持ちを吐き出すように、何度も、何度も、真名の名を呼ぶ赤羽根が愛しく感じます。誰にも呼ばれない名前を呼ばれると、確かにそこに自分が存在すると実感出来る、というのは孤独を抱えて来た者にしかわからない感情かもしれません。これからは、互いの名前を呼んで、もう独りじゃないと生きる幸せに満たされていくのでしょうねぇ。本当に幸せになって欲しい。タイトルが孤独に苛まれた故ならば、二人で寄り添い合えば、きっと耳鳴りもめまいも悪寒も感じないはず。
ツンデレをツンツク…ツンという赤羽根には笑ってしまいました。番外編も良かったですよ~。
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