苦いのテーマ
」のレビュー

苦いのテーマ

阿部あかね

ほんの些細な刺激が手招いた過ちの先…

ネタバレ
2021年12月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ ★中学生の頃から付き合っている幼馴染、新×夏樹の裏切りストーリー。

★新しい生活に期待が膨らむ新と入ったサークルに馴染めない夏樹。それぞれに銭湯で出会った夏樹の先輩・涼真。夏樹は参加したサークルのキャンプのテントで涼真を誘う…。

★「慣れ」の怖さが突き刺さります。そこにある温もりも優しさも愛される喜びも「慣れ」てしまう。当たり前以下のようになってしまう。そこに侵入してくる些細な刺激。夏樹の裏切りを自分が知ったら、再起不能かも…というバレ方です。大きく乱れた新の動悸が、「忘れた」に脈打つことさえ止めたような描写…私の心臓も凍りつきました。そして、笑って手を差し出す新は泣いている夏樹より痛々しい。そこからは、畳み掛けるかのような痛みの連続描写。(確かに“苦い”ではなく“痛い”のテーマのようですね)それぞれの手に残る殴打痕と爪痕が、どうしようもない痛みとしてこちらに迫ってきます。新の「戻れないよ」と「やり直せると思う」に泣きそうになりました。戻れるはずがない、やり直すことも簡単じゃない。ふとした時に痛みや辛さがぶり返すと思う。楽に生きればいいのに…私ならそんな選択肢もよぎるな、と思いました。でも、思い出した愛を手放すことができないと気付いた夏樹と、我を忘れるほどの夏樹への愛を自覚した新に、私も「すごいな」としか言えないです。そして、それを描き上げる作者様がすごい。初めてのデート…お互いの表情に変化を感じる2人の視線が、とても良かったです。

★描き下ろし含めて215ページ。リバカップルの浮気は…なるほど、それでバレるんだな、と知りました。涼真の恋の行方も気になるところですね。

★阿部あかね先生も私にとって中毒性があります。綺麗事で済まさない心理描写やエグみのある図柄に心とらわれています。
いいねしたユーザ12人
レビューをシェアしよう!