近距離恋愛
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近距離恋愛

伊東七つ生

4つの短編と1つの後日談

ネタバレ
2021年12月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『近距離恋愛』幼馴染のかわっちに20年告り続けた大ちゃんに、ある日かわっちからOKが出ます。まず行動してから考える大ちゃんは、次にどうすれば良いか困ってしまいます。お互いに先への不安を抱えながら「せーの」で一緒に次の一歩を踏み出します。
『影のわずらい』23歳の三千彦は、父親の従弟である38歳の覚とは、選ぶもの好きなもの怪我するタイミングまで悉く一致します。何でも同じだからと言って近付き過ぎてはいけないと自嘲する三千彦が、覚といる時に目眩を起こします。
『床屋のカノン』田舎町で宗佑が営む床屋に、ある日ニットキャップを被った少年が訪れます。自分で切って失敗したという少年•小鹿くんは、自転車で山越えして隣町から遥々やって来たのでした。小鹿くんはそれから、夏は自転車で、雪の降る冬は電車で通うようになるのですが、電車の廃線と共に来れなくなってしまうのでした。むせかえるような田舎の夏の中、カノンの主旋律が再び始まります。
『発熱地帯』地震がきっかけで押入れの壁が崩壊し、お隣同士の漫画家の宮本さんとリーマンの峯さんの行き来が始まります。自分の暮らす世界しか知らなかった二人が相手との交流で色んなことに気付きます。
いずれもエロは無く、ジャンル分けの難しい作品ですが、心情と背景が丁寧に描き込まれていて、懐かしい光に照らされたような独特の世界観があります。
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