にえるち
」のレビュー

にえるち

のばらあいこ

「ラビリンス」

ネタバレ
2021年12月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ ★父と母が結婚して生まれたルミナと父と母が結婚しなくて生まれたセラの異母兄妹ストーリー。

★ルミナとセラの父は同じ。2ヶ月違いの兄妹。ルミナの母とセラの母は仲良し。セラは自分が恥ずかしい。ルミナと一緒にいるのはヘンだと思う。ルミナはブランコを漕ぎながら言う、「ヘンでもいーじゃんっ」。手をつないだらもやもやも消える。そうして、中学生になった2人は…。

★「にえるち」の意味が分かるシーンは、その一連の衝撃の強さに打ちのめされますね…。凄まじい勢いでつかみ掛かった父の手は、ずっと幼い頃は優しく差し伸べられたものだったのに、一瞬ですべてを打ち砕きましたね…。ずっと抑えていたやり切れなさ、恥ずかしさ、「フツウ」と違う「俺たち」の苦しみを叫ぶセラに、涙をこらえきれなくなりましたよ。ルミナもただ、セラに触れたかっただけ、一緒にいたかっただけ、そんなドキドキしてとろけそうになる気持ちを、どうして他人(自分以外の人間)に否定されなければならないのでしょうね。異母と言え、「兄妹」というタブーに鋭く切り込みを入れ、2人が結ばれるということで起こり得る出来事まで描かれていること、そこでハピエンにしなかったことも、良かったですね。ラストに向かうシーンの一つ一つがより感動的でした。

★表題作のみ202ページ。兄と妹という背徳感のある恋愛物語にとどまらず、人の成長(強さ)と脆さの対比や人を愛する純粋な想いと「フツウ」に囚われる歪さなど、細やかな心理描写が本当に素晴らしいと思います。手のつなぎ方の変遷も印象深いですよね。

★12月25日『寄越す犬、めくる夜』、いよいよ、ですね。嬉しいけれど、「完結」が寂しいな、とも思います。でも、やはり、とても楽しみ。
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