櫻狩り
」のレビュー

櫻狩り

渡瀬悠宇

耽美・純愛・エロティック

2010年12月25日
渡瀬先生の新境地、といった所でしょうか。

この方といえばファンタジーやドタバタ色が強いイメージだったのでこの系統はお手並み拝見とばかりに購入しましたが、正直意外なほど面白かったです❗
この作者さん本当はこういうのが書きたかったのでは?と思ってしまうくらい、丁寧に耽美な世界観を描き切れていたと思います。



受験のため上京した田神正崇はひょんな事から侯爵家の令息・斉木蒼磨の家に書生として住み込み始めます。

謎めいた麗人・蒼磨を慕い彼にただ真っ直ぐ忠義を尽くす田神に、凍てついた心を持つ蒼磨も次第に惹かれてゆき2人の距離は縮まるかのように思われましたが・・・
蒼磨の周りでは不可解な事故や死が相次いで起こります。


自害した蒼磨の母、
蒼磨に亡き妾の面影を追い続ける父、
開かずの蔵に幽閉されている美少女・櫻子、
異常なまでに執着する書生・寺島、部下・吉野
蒼磨を“診察”に訪れる医者・葛城・・・・


蒼磨を取り囲む登場人物たちは彼を筆頭にみな暗く歪んでいて、

田神の登場により少しずつ世界の均衡が崩れはじめ
平穏だった田神少年の日常は次第に激しく狂ってゆきます。




耽美、同性愛、近親相姦、暴力、エロ、サディズム、サスペンス、そして悲しいまでの“純愛”。
あらゆる狂気が凝縮された、く残酷で甘美な物語です。




戦前独特の世界観と言葉遣いをベースにしており、また暴力、性描写もかなりあるので好みは大きく分かれますが
日本古来の暗くてエロティックな作風が好きな人は本当にハマると思います。


ただエロや暴力的なだけではなく、彼らがそうなるに至った背景や心情も細かく描かれており
ラブストーリーとしても完成度が高く、サスペンスとしても引き付ける展開で読み応えがありました。
ラブシーンの描写に至ってはとても官能的で、お見事でした❗



作中の蒼磨の田神への報われない愛の示し方がとても悲しくせつなくて、読んでいて思わず胸が詰まりました😢
ラストも悲しいですが私はありだと思います。



万人にお薦め❗という種類の作品ではありませんが、
私はこの作品、凄く好きです。
気になった方はまず一話購入を😃
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