おしえて僕の神様【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】
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おしえて僕の神様【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】

瀧本羊子

うーん、深いな。

ネタバレ
2022年1月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 初読み作家様です。タイトルからファンタジーな神様の恋かと思っていたら、教祖様的な存在の神様でした。あぁ、しまった。そっちかぁ…と思いましたが、なかなか深くて良かったです。
心優しい真心は、人の心を癒す不思議な魅力を持っている。真心に恋をしている慧は、秘密を打ち明けられて…
仕事的なものとして『かみさま』のお務めをこなしている真心ですが、誰にでも平等で居られる事はとても難しい事。みんなの神様であることを使命としてその道を選ぶとするならば、一人の大切な人を傷つけたその人の心の穴は、誰が埋めるのだろう。一人を選ぶ事で、たくさんの人を悲しませる事に罪悪感があるように、その逆もまた同じだと思うのですが、真心の葛藤がよくわかります。どちらの手を選ぶのか…
真心を頼る人達に守れない約束をしたと自分を責めるけど、そもそもそんな約束は最初から出来ないよ。人間なんだもの…限界がある。人は神様にはなれないんだから…心に穴が開いた人を、自分の力で埋めきれるなんておこがましいかもしれない。少しでも力になれたらいい、ってぐらいでちょうどいいんです。良い方へ傾くのも、悪い方へ傾くのも、結局のところ自分次第なんだと思います。
真心自身、自分の気持ちを押し殺して。みんなの神様であろうとする姿が痛々しく感じます。じゃあ、真心の心は誰が埋めるのだろう…となるわけで、誰かのために犠牲になる事は美しい話ではあるけれど、それで自分の人生を生きてるって言えるのかい?
大切なものを見失ってしまいそうな真心の手を掴んだ慧がとても素敵でした。自分の人生は自分のもの。慧のお母さんの言葉が心強いなと思いました。
なかなか深いお話で、自分ならどうするだろうと考えて、答えは見つかってなくて、真心の葛藤が身にしみてわかりました。でもやっぱり、大切な人と一緒にいる幸せを選んでしまうんだろうと思います。

作品を選んで、知ってるお名前があるとなんだか嬉しくなりますね。
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