剣客商売
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剣客商売

大島やすいち/池波正太郎

鬼平犯科帳と比べると…

ネタバレ
2022年1月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人情時代劇の名作である事は間違いないのですが、鬼平犯科帳の長谷川平蔵と比べると、主人公の秋山小兵衛の魅力が一角落ちる事は否めず、主人公は己の裁量で悪人を暗殺したり、逆に知己だからと罪を見逃す事も多く、個人的には、好ましい人間だと思えませんでした。
一例ですが、詐欺師の坊主を捕まえた時、強欲な人間からしか盗まないと見逃しましたが、悪事を働くなら、その報いがある事は覚悟するべきで、生涯を詐欺師として生きて行くといった人間を見逃すのが人情とは思えず、金を騙し取られた悪党は、結局、また悪事を行い金を作るのですから、被害を助長しているのと同じ事だと。
また、旗本達に斬られそうになっていた町人を、畳針を投げて助けた元弟子を救う回は、相手が軽度の知的障害でも、時代背景として、武士が町人に小便を掛けたられたなら無礼討ちは当然の権利で、助成に入る以上、不意打ちに手裏剣を投げて相手の目を潰した卑怯は、病後だとしても何の言い訳にもなりません。その弟子に恩義のある目明しが、雇われていた旗本を裏切って殺された事を錦の御旗にした様ですが、年間二十両もの手当を受け取っておきながら、恩人の為に裏切るのが人の道とは、失笑を禁じ得ませんでした。年間二十両と言えば、下級武士である町方同心の扶持米よりも遥かに多く(約二倍)、その旗本が気に入らないなら、手当を受け取らず、関わらないのが人の道でしょう(苦笑)旗本側も、飛道具で不意打ちを受けたと、堂々、届け出ればいい。刀傷ならいざ知らず、飛道具での不意打ちなら、恥にはならない。これが恥とされたら、物陰から弓を射掛ける事が正々堂々になってしまう。些か、納得出来ない展開もありました。
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