このレビューはネタバレを含みます▼
●『恋のはなし』とともに、シーモア島でオススメいただかなかったら購入していなかったと思います。本当に感謝です。前後編あわせて約50P。読み終えると、確かにあちらは“恋”で、こちらは“愛”なのだなと思えます。タイトル秀逸。
●前編は、まだ“恋”かな。『恋のはなし』を読んで、ちひろは無垢な悪魔だなと思いましたが、まだそんな感じ。自分の欲求に素直で、律に抱かれることが恋だと思ってる。でも、どこかずっと違和感を抱えていて…。そこには会話もない、笑顔もない。律と恋をしたら幸せになれているはずだったのに。
●律が「もうやめよう」と言い出したことで、違和感が具体的な形になっていく。追い討ちをかけるように優哉が現れて罵倒を浴びせる。“恋”だと思ってたものが間違ってたと気付かされる。
●でも、これでようやくちひろが“愛”を知ったのかな…と思います。いくら身体を重ねても、律がつらそうな顔をしていたこと。自分が律と優哉の関係を壊していたこと。律が置いていった車のオモチャを捨てられなかったこと。ひとつひとつがようやくちひろの中で形になった。
●律も苦しかっただろうな…なんて思ってしまいます。根っこのところでは、二股なんかかけられないタイプの人だと思うから。ちひろに「もう会わない」と言ったときの律は、まだ“恋”の続きをしてる。無垢な悪魔に魅せられたまま。でもこのときにはちひろは“愛”を知っていて、笑顔で律に「バイバイ」と告げるのです。
●愛を知ったちひろは一層美しい。苦しさも痛みも知ってる。律は?ちゃんと“愛”にたどり着いただろうか。今度こそ二人で「愛のはなし」を紡いでほしいです。幸せになってほしい…