このよのはじまりこのよのおわり
」のレビュー

このよのはじまりこのよのおわり

たうみまゆ

短編集なのに短編集にあらず

ネタバレ
2022年1月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 短編集…なんですが、なんだろ、一作品一作品がかなり読みごたえがあって、短編なのに短編な気がしない短編集。「すごい」いえ「上手い」の一言です。
心の機微に重きを置いた作品ばかりです。致してる場面はほとんどなくて、主人公2人の繊細なやりとりに心を揺さぶられます。時代が現代でないところも、雰囲気があって良かったのかも♪
個人的、ベスト作品は表題作。女形の役者と手習いの先生の幼馴染みの2人のお話。飄々とした先生が、これがなかなかに曲者だった(笑)
この2人、巻末に再び登場するのですが、その際、曲者先生(←個人的感想)が恋人に「仕返し」をするんですね。自分の嫉妬をあからさまに出すことはせず、スマートに相手をやり込め釘をさす方法が、なんとも粋。塩梅とは。う~ん、「上手い!!」と。落語じゃないけど、思わず膝を打ちそうになりました(笑) 食えんなぁ~この先生(笑)
私は、この作品がとても気に入ったので、この作品に出会えたことで買った甲斐がありました(^^)
他にシンデレラのお話や将棋のお話も好きでしたが、少々悲しいお話も中にはあり。ちょっぴり涙し…。
でも、基本、ハピエンです!
「もっと読みたい。続編プリーズ」の短編もある中、こちらはこれで完璧と言いますか。続きを希望するより、余韻を大事にしたいと感じる結末ばかりで。そこもまた「すごい」と思いました(^^)
全作品を通して、殿方たちに並び輝いて見えたのが、女性陣。各作品に登場する女性が、強い。カラッとしてて、芯があって。表情にも言葉にも惹かれます。まさに主人公たちの「背中を押して」きた女性たち。その心意気とキップの良さに痺れます!
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!