このレビューはネタバレを含みます▼
●上巻はほとんどが2014〜2015年の発表、下巻は全て描き下ろし。各270〜280Pの大ボリューム。あとがきに「どうしても完成させたかった」というような記述がありました。今こちらの作品に出会えてよかったなと感じてます。
●生い立ちや性格、音楽への向き合い方、音の出し方、あらゆることが対照的な要と明慶。だからこそ惹かれ合うんだろうなぁ。明慶はずっと要好き好き大好きで、その感情をベースに音を動かしていく。好きの気持ちや、嫉妬や悔しさまでも、音に跳ね返っていく。
●逆に要は、音楽を通してしか明慶のことを考えられない。人を人として愛するということを知らないままなんですよね…。自分は明慶の音に惹かれてるんだと思っているし、明慶の音にとって良かれと思って身体を触れ合うことまでしてしまう。全然噛み合わない。この食い違いが長く続き、読んでいて切なくて仕方ないのです。
●最初は明慶が噛み合わなさに苦しんで…離れて今度は要も伝わらなさに苦しむ。お互い相手の音をとても尊重していて、気持ちは二の次と抑え込んでしまうのです。でもその「相手を大事に思ってる」という想いが、最後には音で伝わるっていうのが二人らしいなと思いました。
●終盤のミリィとの面会エピソードは急に突っ込まれた感じにも見えましたが、上巻から読み返すとちゃんと1話から布石があって驚きました。幼い要を救ったのがミリィの音で、明慶は確かにミリィの音の遺伝子を受け継いでる。要が明慶に惹かれたのも必然だったのですね。
●あらゆる場面で音が聴こえてきます。楽しい、嬉しい、苦しい、つらい、幸せ…いろんな音が。絵も美しく素敵でした。拝読できてよかったです。作者さん、完成させて下さりありがとうございます。(レビュー長くなってしまってすみません。)