なんか言えよ
」のレビュー

なんか言えよ

鳥人ヒロミ

きれいな声が出せても肝心なことは言えない

ネタバレ
2022年2月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『If〜もしも〜』『なんか言えよ』小学生の時に事故で声を失った19歳のヤエは30歳のライター新妻と知り合います。歯に衣着せぬ新妻は、携帯で意思表示するヤエに肉筆で書くように言い、さらに食道発声法を勧めます。出逢ったその日に関係する二人ですが、声を持たないヤエと鋭い言葉で人生を切り開いてきた新妻とを対比させながら、二人が幾つものIf〜もしも〜を経て巡り合い歩み寄り結ばれる様が、しっかりした脇キャラとエピソードでグイグイ進行してゆきます。『加納兄弟の屈辱』某姉妹ユニットをパロディ化したコメディ。『ナタナエル』黒のロングコートに白い大きな翼の天使が二人、ビルの屋上から街を見下ろす『ベルリン天使の詩』を彷彿とさせるシーンから始まります。絶望する者に希望を与える天使ナタナエルは、自分のことが見える少年と出逢います。無垢な幼い者にしか見えない筈の天使が見える優紀は男に監 禁され虐 待を受けているのですか、そこには絶望すら無く、ナタナエルは優紀にひかれてゆきます。何も感じることの無い天使と、恐怖の麻痺した少年とが「勇気一つを友にして」ラストを迎えます。メリバですが、切れ味の鋭い素晴らしい短編です。
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