いっそ声がなかったら【電子限定かきおろし付】
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いっそ声がなかったら【電子限定かきおろし付】

猿和香ちみ

「愛」は「負」を克服する「妙薬」。

ネタバレ
2022年2月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 六瀬君は、真面目な清掃員さん。素朴な美しさを持った優しい青年ですが、ただひとつの悩み、吃音でした。言葉が出なくて焦る自分、喋り方で嫌われたと思い込んでしまう繊細な心が「吃音」という魔物に食い荒らされてしまう切なさ。
劣敗なんてあってはならないはずなのに、人は人を見下して優位を保とうとする愚かな生き物だから、幼い頃から差別されてきました。そんな彼が落とし物で知り合ったエリートの高科さんは、自分とは対称的に堂々とプレゼンしていた憧れの人。何より、吃音を卑下することなく、六瀬君の名前「瑠璃」の名とおりの美しい宝石のような人柄を愛してくれました。そんな己の美しい宝石を知らずに、自分から高い壁を作ってしまうのは立場からして仕方ないけれど、高科さんから「本当は話しをするのが好きなんでしょう」と言われて泣く姿に、思わずこちらももらい泣き。いゃあ、年取ると涙腺が弱くなってなってw
吃音だろうが、楽しくおしゃべりしたいよね。好きなことをいっぱい話したいよね。せっかく言葉という宝物を頂いた人間だもん、声に出して、又は手指を駆使して、おもいっきり話したいよね。
ボードレールの詩に「あのひとの声は香りとなる!」とありますが、正に六瀬君そのもの。このお話優しいけど、この作者様もやさしい方なのでしょうね。曲の選曲もグッド。心に残る作品を作者様ありがとうございました。大切な一冊にします。
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