スリーピング・バグ
」のレビュー

スリーピング・バグ

京山あつき

立ち読みではまって初BL本購入

ネタバレ
2022年2月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ ※全体的なネタバレ感想です。
いわゆるBL本に興味を持ったことがなかった。性描写の強い漫画が苦手なので手を出したことがなかった。

コロナ自粛でシーモアで無料漫画を読み漁り、ほとんど読んでしまったのでBLを最近読み出した。昔よりは抵抗なく読めるけれど、すぐに(あるいは冒頭から)性行為が始まるのに違和感があった。きっとそうじゃない本もいっぱいあるんだろうとは思うけど。

たまたま作者の本に行き当たった。
一話読んで、引き込まれた。恋愛すら始まっていない!
新卒のうるのとベテランの本郷さん。距離が近いわけではないけれど、うるのはなんだか気にしてしまう。だけどそれは、尊敬であり、憧れであり…。普通の会社の上下関係とも違う技術者ならではの関係性も面白い。

ひょんなことから本郷さんが転がり込んでくる。うるのは、「俺の持ってるものならぜーんぶ出すわ」と大金さえ貸すことにも躊躇いがない。気になるだけの人にそこまで思えるかな、と思うが、そこまで思うくらい本郷さんがうるのの心を占めていた。まだ若いのに500万も貯めてしまうくらいうるのには欲がなくて、無欲な彼がぜんぶ差し出してもいいと思うくらいやっぱり本郷さんの存在が大きいのだ。

でもこの感情は何?と悩むうるの。すごく自然で素敵だ。そばにいてほしいけれど、身体ってそんなに大事かな?当たり前の疑問なのに、待ったをかけられた本郷さんを見ていると本郷さんの方が自然に思える。

だけど彼らは技術者。彼らなりの論理と推量を持ってやがて答えに辿り着く。先に心が惹かれたけれど、心が繋がるにはちゃんと必要な工程がある。

そこまで来てようやく、もっとくっつきたいという気持ちが形になる。BL慣れしていない私ですら、やっと!という気持ちになった。やっとだからこそ2人の前進を祝福したくなった。
愛すべきサブキャラ、ねこみみ先輩がそんな2人とは対照的にいきなり、そしてすぐに結婚してしまうのも良い。2人なりの歩みが強調されるように感じた。

最終話でようやく身体も繋げたけれど、それでもまだまだゴールじゃない。技術者にとって言語の学習に終わりがないように、人の関係もやっぱり終わりがない。
こんな感じで2人はこれからも2人なりの関係を築いて行ってほしいなと、読後心がとても穏やかになれた。

この後作者買いしたが、どの作品もとても良かった!
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