ベルデアボリカ
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ベルデアボリカ

坂田靖子

実直な王と、美しき魔物(4巻完結)

2022年3月7日
ヨーロッパ風の架空の小国ケルウォースを舞台とした、本格的剣と魔法のファンタジー(他の方のレビューに魔法を使えないとありますが、かなり大規模に使ってます)。なんちゃってヨーロッパ風ではなくかなり本格的で、アーサー王物語的です。
実直な王ツヴァスと、束縛を嫌う魔法使いヴァルカナル。この二人の緊張感を伴う関係性が素晴らしいです。
魔法使いとしてのヴァルカナルの描き方も素晴らしく、強大な力・ひ弱な身体・無垢な残酷性・猫のような気紛れさ……正に表題どおり「美しき魔物」。
ストーリー面から見て、小国ケルウォースの生き残りを賭けた歴史伝説的物語として非常に良くできていて面白かったです。
また、精神面から見ると、「子供時代の万能感ある自分だけの世界を捨ててでも、自分の決めたたった一人と共に歩むこの世界は掛け替えがなくいとおしい」……そんな物語だと思います。

著者作品は、どちらかと言うと軽妙なものの方が有名ですが、この作品のようなシリアスなものにこそ著者の真髄があります。
1巻の無料立ち読み部分が51ページと多く、そこを読んで面白いと思ったら、4巻最後まで読んで間違いありません。
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