オスワルド
」のレビュー

オスワルド

中川カネ子

獣の本能むき出し!

ネタバレ
2022年3月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ ●まず…冒頭の「メス化」とか、王宮や王子のこと、飼育係の調月だけ獣と話せる(獣人型に見えてるのも調月だけ?)こと、アギフの幼少期に何があったのか、など、ちらりと触れられてはいるものの深掘りされていない設定が多く、もったいないなと思います。ほぼヴァルとアギフの関係性しか描かれていません。(それはそれで良いと思うので、それなら枝葉の設定は省いてもよかったかな…と。)
●とはいえ、二人の関係に焦点を当て、それがヒリヒリとしたものに変化していく過程はとても好きです。おそらくですが、獣社会の強弱関係、ネコ科の感情表現、アルビノの特徴などの生物学的な知見があれば、いっそう納得感が高まって楽しめるんじゃないかなと思いました。(私には、ない…)
●幼いヴァルは天使です!でもアギフに懐いてただけのヴァルの気持ちがだんだんと独占欲に変わり、発情して性欲も重なり、獣らしくなっていく。アギフを組み敷こうとしますが、そこは獣のピラミッド社会、弱いままでは抱くこともできない。だからヴァルは強くなろうとします。強く、美しくなっていく。
●愛だ恋だの感情よりも、どちらかというと獣の本能や獣社会の摂理に従ったお話だと思うので、「愛が足りない!」と読めてしまうのは致し方なしかもしれません。でも二人の間には強い絆があって、お互いが唯一無二に違いない。気持ちと本能の両方をぶつけ合って、殴り合って求め合う二人はとても綺麗でした。
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