夜の兄弟【合本版】
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夜の兄弟【合本版】

山本青々

兄の因果と弟の業

ネタバレ
2022年4月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 194ページ。
実兄弟BL。ずっと手の先が冷たいような雰囲気でした。絵がきれいで、表情が良い。弟の眼とか、兄の怒ったところとか、ぐわっと掴まれるものがあります。
兄がなかなかの酷さ。生粋のいじめっ子体質と言いましょうか……。この兄の因果が弟に報いている感じが、どうしようもない残酷さを演出しています。それでもこの兄にも良心的なものはあって、それが弟に対する情なんじゃないかと思うのですが、それさえ無ければ弟が兄を好きになる事もなく兄の因果を受け取らずに済んだのではないかと思うし、最後に兄が弟を宣言通りに捨てる選択肢もあったと思うので、なかなか複雑です。弟に対する情という「良心」が、結果的に弟を「人でなし」にしてしまったという皮肉が、作品世界の冷たさを増していて良い。弟にあったのは、美しく生まれたという業と寂しさだけで、それを壊して人でなしの魔性にまでしたのは、間違いなく兄の因果だと思います。
恋情がある感じではなく、幸せとはとても言えない関係性ですが、こういう抜け出せない円環というのは、物語として魅力があります。
ただ、途中で「母親どこ行っちゃったの……?」ってなったので、星マイナスで3よりの4。最初から母親居なくても良かった。
((追記:森野きこりさんの別名義))
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