恋せよ千年ニート【特典ペーパー/電子書籍限定マンガ付】
瑞原ザクロ
千年間、生きることを一時停止した浦島太郎
ネタバレ
このレビューはネタバレを含みます▼
ブラック企業に勤める常陸隼人が、ふらふらと浜辺を歩いている時に大波に攫われます。薄れゆく意識の中で「ああ、これでもう明日会社に行かなくていいんだ」と思ったところに男が現れ救けてくれます。次に気がつくと、そこは竜宮城で、乙姫と隼人を救けてくれた男•浦島太郎がいました。黄泉の国に通じる竜宮城に生きた人間は入れないけど隼人は臨死状態だから入れたこと、生と死のどちらでも選べると言われます。ただし生を選ぶのなら太郎を連れて行って欲しいと言われるのでした。ところが太郎は千年近い竜宮城でのニート生活でスポイルされ帰る気がありません。そんな太郎を叱りつける隼人にキュンときたという太郎は、なんだかふわふわしたキャラでエロいアプローチもしてくるのでした。日本のお伽話の中でもぶっちぎりの不条理さを誇る浦島太郎伝説を下敷きとしたラブコメですが、生きるということ、命への考察が深いです。貧しい漁村での暮らしが辛く、生きることは空しく竜宮城で泡と消えた方が良いという太郎の考えは、現代社会の社畜として生かされる隼人と被ります。玉手箱の設定もよく考えられていて、読み応えがありました。
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