このレビューはネタバレを含みます▼
ヤクザの組長の息子•片桐大和が、図書室で自分のことを知らない生徒と出逢います。都築右介と名乗るその生徒は医学部を目指して勉強していました。二人でいるとお互いに心穏やかに過ごせていたのですが、ある日いつものように図書室にいた右介は、「ヤクザの親父が死ぬかもしれない。俺の犠牲になってくれ」と言う大和に無理矢理抱かれるのでした。10年後、大和から逃げることの叶わなかった右介は、大和の愛人であり闇医者として過ごしていました。右介を自分の所有物だと言い切る大和は、右介を敵対する組長にあてがい、自分はその娘を嫁に迎えます。自分が汚れてゆくことに苦しむ右介は、大和の結婚を機に離れたいと大和に告げるのでした。何一つ悪いことをしていないのに、大和の我儘と暴力とで大和の人生に巻き込まれてしまった右介ですが、最後には自らの意志で自らの人生を選びます。大和の子をなした大和の妻と相対するシーンに、右介の静かな決意と矜持が漲ります。20年かかって辿り着く、右介が手入れするバラ園でのラストシーンは、思わず彼岸を連想する穏やかさでした。続編『三色混ざれば黒になる』では大和のDNAを受け継ぐ息子たちの姿が描かれます。