このレビューはネタバレを含みます▼
マトリョーシカ人形みたいにひとつ開けると次の子が出てくる、また出てくる、まだあんの?
上下巻の上だけで既に多重構造になった現在と過去、ウサギ(兎太)とカメ(生亀)のキャラの深みに落とされていくような。
初読み作家様だったのですが、今までどうして知らなかったんだろう?
結婚情報誌制作関連の仕事をしている兎太と、中途入社の年上部下、生亀。
40p目の兎太の片目涙とか、通常のblとはちょっとずつ違う表現に掴まれてしまいました。
男が好きな自分を認められず、かといって同棲していた彼女との結婚にも踏み切れず、とうとうあんなことが起きてしまった兎太。
家庭環境のせいか、人と心触れ合わす機会も無く、人間的に欠落していた生亀。
成り行きでその後一緒に暮らし始めた男2人。
繊細な絵と繊細な心情の追い方。
挟み込まれるデフォルメの効いた絵も、綺麗系な絵も大好きなんですが、冒頭シーンに戻ってくるまでの行きつ戻りつが切なくて長くて。
どこに行き着くのかわからなくなってきた頃、下巻の中ほどすぎてやっと冒頭のシーンに。同じシーンなのに、もう上巻の時とは全然違う見え方。だって彼らの1年半を、なんならもっと長い年月を知ってしまったから。
いやもうほんと、どこに行くのこの2人?とは最後まで思いましたけど、泣きましたよ。
ストーリーの回収、上手いでしょ。思いがけずスパダリ製造機になった兎太、今度こそ幸せになるのよ〜。