Lover Santa Claus
」のレビュー

Lover Santa Claus

九重シャム

切ないを通り越して残酷

ネタバレ
2022年4月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 上152、下198ページ。
謳い文句通りのダークファンタジー。
美しい魂が苦痛に晒され続けることで、人々に幸福が与えられる……イエスキリストが磔刑にされることで人の罪を肩代わりしたとされるのと同様な設定で、サンタという呼称にしたのもよくわかる。
わかるけど、いやこれ、かわいそうすぎるでしょう。
ずっと不幸と自己犠牲と罪を引き受け、たったひとつの救いであった五百利の隣という場所にも罪悪感を植え付けられるとか……まじか……。五百利との関係も、恋心が生まれる前に引き離されちゃった感じで、エロシーンでも二人の気持ちに微妙なズレがあってちょっと幸せ感が低い。この二人はこれからでしょうよ……(涙)。
それでも五百利が忘れずにいてくれさえすれば、という僅かな望みは残されているので、脳内補完でなんとかします。
あと、祈さんがちょっと不憫ですね。
悲しすぎて再読頻度が低そうなので、けっこう好きですが星3つ。

〜〜〜この先、理屈屋による設定についての感想〜〜〜

ファンタジー設定に関しては、同作者の別作品も2つほど読んでいますが、かなり考えられていて矛盾は特に感じないのが良いけれど、とにかく情報量が多い。矛盾が出ないように色々と付け足している感じで、ファンタジー世界の構築と言うより、ゲームのルール感が強いです。そのせいで読んでいる時にわかりにくさが出てしまってもったいない。
今作に関しては、「サンタになった後の翼の見た目は、他人からは別人に見えている」のが、かなりわかりにくかった。きちんと伏線も張られ(上巻ネクタイ買った店の店員さんのセリフ)、鏡に映った姿と本人の姿が違うというシーンもあるんですが、作中ではずっと本来の翼の姿で描かれているので、少なくとも私はわかりにくかった!漫画で読者にわかりやすく描くには厳しい設定だと思うので、もっと情報量の少ない「毎年他人の記憶から消える」くらいのリセットルールでいかがですか。
要素にも情報量が多く、作者の萌も大事だけどもちょっと減らしても良い。そりゃあ私も双子という存在はめちゃくちゃ好きですけども。
ファンタジー大好きなので、矛盾を潰すところからもう一歩踏み込んだ練り込みを期待します。
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