嫌い、大嫌い、愛してる。
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嫌い、大嫌い、愛してる。

ARUKU

復讐と逃亡と愛

ネタバレ
2022年4月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 出口の見えない迷路を彷徨っている気になりました。ただの獲物としか見ていなかった奏に凍月が徐々に魂ごと溺れていく様はある意味で狂気のようで。その狂気に晒されながら復讐を誓い、そして愛していると自覚するまでの奏。二人の逃亡。現代ものにしては異質で薄暗く寂れ、汚泥の臭いを漂わせた雰囲気を感じたのは、ただ、裏淋しいど田舎の小さな町が舞台だからと思って読んでいました。土地が50万なのも黒電話なのも。診療所で、戦中と出た時合点がいきました。戦中ではないにしてもそうたいして時間的距離がない、もしくは、物質的距離がない、とても極一致した世界観。異質で薄暗く寂れて汚泥の臭さ訳、このお話の背負う重さ──そうか、そういうことか!
描き下ろしの断章が客観的な二人の姿で、これがあるのとないのでは雲泥の差だと思います。その後が2ページしかなく後ろ髪を引かれますが、それもこのお話の異質な良さでしょうね。
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