みのりの森
」のレビュー

みのりの森

まりぱか

それぞれの弱さを包み込む大きな森

ネタバレ
2022年4月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 嘘つきは迷って出られないと言われる「みのりの森」がある田舎の集落で葬儀が行われます。亡くなった慎太郎の幼馴染•昌典以外は身内だけのひっそりとした葬儀に、渋谷実と名乗る青年が訪れます。地元に残った昌典は、卒業後上京し、そのまま戻ることなく亡くなった慎太郎のことが好きでした。突然命を絶った慎太郎への想いが溢れたその夜、昌典と実は抱き合います。慎太郎の東京での友人だと言う実は自分のことを語ろうとしません。昌典も敢えて何も聞かず、二人は寝食を共にし、慎太郎の荷物を片付け、抱き合います。実の存在で、昌典は初恋の相手を失ったショックから救われるのでした。二人の記憶にあるのは、いつも明るくちょっとふざける慎太郎の姿で、それだけに後悔や喪失感は大きく、また昌典と実を繋ぐ慎太郎を死に追い詰めた理由は最後までわかりません。故郷に残した大切な幼馴染にだけは最後までカッコ良くいたかった、慎太郎の弱さと強がりが切ないのですが、それでもその不在も含めて慎太郎を大切にしながら、二人は未来に踏み出します。
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