このレビューはネタバレを含みます▼
電子機器メーカー営業職 棚橋孝太郎 25才×高校の国語教師 元担任 水原慧 32才
「してはいけない恋ほど苦しいものはない。できることなら、僕はあの人に恋なんてしたくはなかった。」
試し読みでこの文章を読んで 読みたいっ!て思いました。
はじめの「いつか終わる恋のために」は棚橋目線、続いての「恋ひめやも」は水原目線で書かれています。結婚する予定の彼女のいる棚橋は同窓会で元担任の水原に会い、なんとなく気になり、会う口実を作って一緒に過ごす時間が楽しくなっていきます。その間に水原がゲイであることを知り...。ノンケがなぜ?っていうのはありますが、交わされる言葉が、何て言うか心地よいのです。気負わず程よく優しくて。水原のことが好きになって、でも自分には彼女がいて水原は好きだとは言ってくれなくて。
恋ひめやもの「めやも」は古語で「...だろうか、いや、そうではないなあ。」という意味で 恋していないように受けとれますが、上の句を含めると違うニュアンスになっていきます。
本音を言わない、強情で意地っ張りで天の邪鬼な水原の本当の気持ちを表しているようでした。
英田先生は「今まで書いた商業作品の中では、ダントツに地味な話」とあとがきで書かれていましたが、しっとりしたお話でとてもよかったです。拗らせ好きなので感情移入して読めました。ラストも素敵です。
2009年11月 総188ページ 挿し絵なし