魔女と猫
」のレビュー

魔女と猫

黒井よだか

出会いが生きる意味になる

ネタバレ
2022年5月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 前作「オメガの婿取り」で強くて男前のΩがとても良かった作家さん。
表紙の感じと試し読みから硬派なアウトローのお話かと思って読み始めたら、今作は特殊設定ありのどファンタジーでした。予想外でちょっと驚きましたが、めっちゃ骨太の、ザクザクと刺されるような重いストーリーでまたしてもすごく面白かったです。
苦しい展開が続くのに、もがくように必死にお互いを想って頑張る彼らから目が離せず一気読みでした。

寿一のただ普通に生きるということが許されない、非情で過酷な運命。そんな彼が出会ったのが、いつ死んでもいいと自分が傷付くような生き方しかできない須藤。
全てを投げ出すような諦めた生き方をする須藤が辛く悲しかったけど、寿一と関わったことで須藤の中でどんどん生きる力が増していき、執着が出てきたところがすごく良かったです。
須藤が自分の存在を軽んじない、大事にしようと思えるようになったのがとても幸せなことに思えて泣けました。
孤独で気力をなくしていた二人が、この人と一緒なら生きていけると生きる意味を見出し、笑い合うのに胸が熱くなります。
かなりハードなストーリーでしたが、ラストにはささやかでも確かな光が見えて、あたたかなものが心に残りました。
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