魔女の下僕と魔王のツノ
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魔女の下僕と魔王のツノ

もち

性転換は生き方を考えるきっかけだった

ネタバレ
2022年5月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 2014年の連載開始から8年経ち完結。
はじめはTS要素のあるギャグ漫画だと思っていました。大筋である「ビビアンという眠りの魔女を目覚めさせるために魔王のツノを取りに行く」という目標は早い段階で達成するなと思っていたので、それまでにちょっと寄り道するお話を続けていくのかと。
寄り道どころか物語の根幹でした。
セクシャルマイノリティや魔物への差別ついての話は話が進むにつれ色濃くなり、それがさらに面白さに繋がっていきましたね。
年号が変わり、現実世界でも性自認や性指向といった認識が見直されるようになり、漫画を通して考えさせられる機会が多くなったことがすごく嬉しかったです。
心臓病で身体が弱いエリックが小さい頃から己の立場に苦しめられたからこそ、他者へ言葉をおくる重みがあり、説得力がありました。
主人公であるアルセニオかつての親友サウロとの再会も一体どんな展開になるのかすぐに退場させられるのかとハラハラしましたが、話が進むうちにだんだん頬が緩んでいきましたね……。
アルセニオの過去は予想よりはるかにキツかったので陰鬱な話から本来の明るさを取り戻した時はホッとしました。
アルセニオが魔物になる前の話は大体はこちらの本編でも明かされていますが、もし気になれば『教国のレクエルド』も読むといいかもしれません。
ちょうど本編サウロ加入時期にスピンオフが短期連載されてその時に目を通しましたが、結末がすでにわかっているので当時はしんどかったですね……。
最終巻は各々心配事はあるものの、心があたたかくなる話ばかりだったので安心して読むことができました。
「誰かと違うところがあってもそれは変なことてまはないよ」と背中を押してくれるそんな素敵な漫画でした。
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