2055
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2055

三月えみ

つらつらと書きました…

ネタバレ
2022年5月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 言い表しようのない感情が渦巻きました。とても切なく、やるせなく、苦しい…。苦しくなるのに、その苦しさをどうにかしたくて、何度も読み返していました。
そうして、ようやく自分の中でたどり着いたのは、「弥凪は、葵に会いに行ったんだな」という、「終わり」ではなく「再会」というエンド。
冒頭の一コマ、弥凪が微笑んでいたのは、葵に会いに行くことを決めたからなんだなと思いました。葵のそばにいることが、何事にも代えられない弥凪の幸せなんだな、と。だから、彼は最後の一コマも笑っていました。「きっと葵もそうしたよな」と。この選択が、彼の、彼らの愛のカタチでした。
弥凪は、生きようとしました。葵との約束を破ってまで生きようとしました。治まらない胸の痛みに苦しみながら「アオイ」と生きようとし、「アオイ」を愛そうとしたはずです。「アオイ」に愛情を持ったと思います。自分が遠くへ行く前に、「アオイ」を廃棄したり、一人残すことを選んだりしなかったのは、「アオイ」への感謝と愛情があったからだと思います。(もしかしたら、自分と葵の「形」も残したかったのかもしれない…)でも、「アオイ」への愛情は、「葵」への愛とはまったく違うということを、「アオイ」といればいるほど思い知らされたのでしょう。勝手な想像ですけれど…。
もし、葵の姿をした葵の記憶(データ)を持つアンドロイドなんて作らなかったら、時間がかかったとしても、弥凪は別の「生き方」を選べたかもしれない。葵とは違う人と出会い、胸の痛みを和らげることができたかもしれない…そんな風にも思いました。「命」も「心」も本当の意味では再生などできない。そう思いました。突然、カタチを失くしてしまったかけがえのない人を、自分の胸の中に生かすことが、どれほど痛みを伴う尊いことか、改めて考えます。
ただ…自分がこの世界に生きていたら、と考えると、どんな選択をするのかは分かりません。
レビューを上げてくださった皆様、ありがとうございます。
*「穏やかな日常を過ごされていますように」と、ここへ来るたび思います☘
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