カッコウの夢
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カッコウの夢

ためこう

一方通行の恋と憧れが交錯する時

ネタバレ
2022年5月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 輝くような優等生の白島に孤独な名塚は恋心を抱きますが、白島の「中身だけの自分を愛せるのか」との言葉に、想いを告げることができませんでした。4年後、二人は同じ大学に通い、名塚は瀬野というセ◯レで白島への想いを解消しているのでした。ある日、瀬野のバイクと白島とが接触し、二人は救急搬送されます。白島は目覚めぬまま、意識を取り戻した瀬野が自分は白島だと言い出します。よくある中身の入れ替わるファンタジーかと思いきや、上下巻に渡るだけの奥深さがあります。自分と白島しか知らない高校時代の本の貸し借りとその一節を口にする瀬野に、名塚はその中身は白島だと確信するのですが、その本~ルバイヤートの「君の器が砕けて土に散らぬ前に、君は器の酒飲めよ」が象徴的です。中身を愛して欲しい白島、身体しか愛してもらえない瀬野、瀬野の「魂を愛してほしい」の言葉が切ないです。自分をカッコウに例える名塚が、事故をきっかけにみる夢のような出来事とその顛末を描く力のある作品でした。
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