となりのロボット
」のレビュー

となりのロボット

西UKO

ずっと心に残るだろう名作

2022年6月4日
愛するとはどうことだろう、という漠然とした哲学的な問いに少しでも興味がある人には、とても刺さると思う。ロボットと人間の恋愛を取り扱う作品は時々見かけるけれど、この作品では、アンドロイドのアイデンティティが取り分け丁寧に描かれていて、限りなく人間に近くて遠いその微妙なラインを覗き込んでいくことになる。その結果、アンドロイドに対する人間の恋だけではなく、アンドロイドの愛とは何か、というアンドロイド側の想いに寄り添うことが出来て、その稀有な感覚に心揺さぶられた。悲しさとも幸せとも違う感情で涙が溢れた。二人の関係は、高校生の百合という設定も相まって、儚くも瑞々しい。ラストもいい。この作品で提示される愛は、相手の相手なりの愛し方、生き方をを受け入れることでもあり、「分かり合う」という次元を超えた愛であり、アンドロイドであれ動物であれ人であれ物であれ、普遍的に通じるものだと思った。今やクローン人間も誕生し、アンドロイドの精度も上がり、AIの進歩も著しく、ロボット兵士の是非などの議論も現実に行われ、かつての人間のアイデンティティが変わりつつある時代。そうした現実の「進歩」の中でこそ、半ば揶揄されがちな、センチメンタルなリスペクトを個人的には失いたくないと、作品を読んで思った。
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