このレビューはネタバレを含みます▼
首筋がゾワッとするような、とても不思議な感覚で物語が進んでいきます。偏食な主人公、桂の満たされない欲望。その欲望はどうやら遺伝していると桂が気付いてから、ズブズブと沼にハマるように謎の闇に沈んでいきます。シャープな絵柄と画面のコントラストが夏を感じさせるようで、陰影のくっきりさがますます謎の闇を際立たせていますね。エロらしいエロはありませんが、妖しい雰囲気が常に漂っていて、寒気のようなゾクゾク感を味わえました。
さて、ネタバレに言及して。BLとしては桂と兄である栖の関係性ということになるのでしょう。これが恋愛感情なのかは微妙です。食肉の欲求を最初に感じた相手であり、独占欲での束縛にも思えます。兄への食的欲求が性的興奮にも繋がっているようですが、結局兄を性的に求めることはしなかったんですよね。あのまま共依存へと発展して、舐めたり噛んだりしながらの禁断背徳アブノーマルエッチも見たかったなぁ。桂の兄への執着心や彼女の引き剥がし方など、コイツやべぇな、ってシーンがすごく良かったです。このヤバさを知らずに兄は弟に絡めとられていくのでしょう。気付いたときには二人とも沼に沈んでいるのです。そういうの好き~。
曾祖父のきっかけや人影の謎など、謎のまま終わっているものがあり、このお話が単なるミステリーとして描かれたものではないということがわかります。桂のさっぱりした性格もあって、そこにこだわる必要性もなく、読者としても別に謎のままでいいかな、って思える不思議。サイコホラーにも思える作品でした。
ところで、トジツキハジメ作品、すっごく久しぶりに読みました。私は初期の頃の作品が好きで、特に絵柄も大好きだったので、青年誌向けに絵柄が変わった辺りから読まなくなってしまいました。今回、試し読みではまたかなりシャープになっていたので、いけるかな?と思って購入。久しぶりに読んで、やっぱり見せ方や雰囲気が好きだなーと思いました。行間というか、間のある作品が好きなんですよねー。次はトジツキ先生のBLらしいBL作品を読みたいなと思いました。