このレビューはネタバレを含みます▼
上巻は決して振り向かない嘉藤に対して熱烈な片想いを続け、ほぼ狂ったように恋をする惣一が痛々しかったです。惣一のキャラクターがかなり独特なのもあり、見ていられない気持ちになります。
下巻は筋者としての心意気を見せ、組員の心を掴んで活躍し、組長に上り詰める惣一が格好良かったです。段々と嘉藤の心も絆されていき、変化する嘉藤の心情に弄ばれる惣一は不憫でもありますが、2人の距離は縮まっていきます。ただ、ヤクザという職業に纏わりつく血生臭い抗争や面倒ごとに、惣一が巻き込まれて酷い目に遭っていくのは辛かったです。ですが手に汗を握るような緊張感があり面白い場面も多く、裏社会の世界がドラマティックに描かれていました。
ラストは個人的には悲壮だと感じましたが、良いか悪いかで言えば良い結末だと思います。何処かで2人でひっそりと愛し合いながら生きていく、筋者の矜持に縛られて生きてきた2人にとって唯一の光であると思います。それまで惣一の愛を拒み続けてきた嘉藤に、今までその愛を跳ね返してきた分だけ、これから惣一をたくさん愛していってほしいと願ってしまいます。