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今月(4月1日~4月30日)

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シーモア島
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  • 華獣【特別版】(イラスト付き)

    宮緒葵/絵歩

    (良い意味で)気持ち悪い攻め
    ネタバレ
    2022年10月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 設定が練ってあり、情景描写もていねいで古代中国の美しい風景が脳裏に浮かんでくるようでした。登場人物も美形で魅力的。中華ファンタジーの世界観が生かされていて、だんだんと皇国の隠された真実が明らかになっていく展開に引き込まれました。
    気高く正義感の強い受けの瓏蘭と、手段を厭わない異常な執着を見せる攻めの凱焔。2人の対比した性質が良かったです。
    特に凱焔のキャラクターが引き立っていて、まさに文字通り狂犬です。独りよがりな変態で、一見すると相手を立てているようなのにその実とても自己中心的、なんとも言えない気持ち悪さがあり個性的でした。
    最初は瓏蘭が凱焔に翻弄されますが、やがて瓏蘭が狂犬の手綱をとれるようになる展開が面白かったです。
    ただ、瓏蘭がヒロインのような立ち位置にいるのが個人的に好みではなかったです。瓏蘭の心情に感情移入できず、恋愛部分はあまり楽しめませんでした。
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  • 蜜通【特別版】(イラスト付き)

    エナリユウ/雪路凹子

    深い人間ドラマ
    ネタバレ
    2022年8月12日
    このレビューはネタバレを含みます▼ あらすじや表紙の雰囲気から「年下の息子だと思っていた相手に迫られて翻弄される」というBLらしい甘い展開を予想していたのですが、良い意味で裏切られました。といっても話の本筋は同じなのですが、もっと現実味があって俗っぽいです。
    まず、心情の移り変わりがていねいに描かれていてリアリティーを感じました。
    そして、攻めの涼一が恋に必死で人間臭いところが良かったです。特に思春期のあたりは感情表現がストレートで、本当は好きな相手と衝突したくないのに、つい感情的になってしまい自分を制御できない様子がリアルでした。BLだと「こんな人現実にいないよ」というくらい完璧で余裕のある攻めも需要が多いですが、涼一はそうではないです。それなのに自分の感情そのまま、直球の行動で受けを翻弄し落としてしまうのだから、また魅力的です。
    受けの榛名は、その家庭環境や性的指向からの苦労もあり、難しく繊細なキャラクターです。辛かったことも多いだろう過去ですが、そこから自力で脱出し自由を掴み取るために一生懸命努力する、強さを持つ人物でもあります。しかしその分、表面の強さの裏には精神的な弱さ、過去に得られなかった愛と安心を欲する部分があり、強さと弱さのギャップが皮肉屋で天邪鬼な言動につながっているのかもしれません。初恋から逃れられない榛名の純粋さは切なく、涼一は榛名の心を奪うことで、片想いの枷から榛名を本当に自由にしたのだとも思えます。
    雰囲気や濡れ場はそこまで心に刺さらなかったですが、ストーリーが予想以上に深くて良かったです。
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  • 透過性恋愛装置

    かわい有美子

    面映ゆいほど純粋でひたむきな恋
    ネタバレ
    2022年8月7日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 同シリーズの「上海金魚」もそうですが、登場人物の設定に一貫性があり細部まで凝っています。まるで現実に実際にいて動き出しそうな、魅力的なキャラクター達でした。
    北嶋は浅慮で自己中心的、協調性がなく、平気で他人に迷惑をかける人物です。しかし捻くれている訳ではなく、一見欠けているように見える人間性の中には真っ直ぐで素直な性格があります。この美点とも言える裏表のなさが逆効果となって、憎めないからこそ誰も注意できなかったのでしょうか。若くして利発で、才能と美貌を持っていることも拍車をかけたのかもしれません。考えにしても言動にしても誰もの反感を買う人物ですが、牧田に恋をしたことによって北嶋の持つ素直な魅力が見えてきます。
    北嶋は滝乃が「専門馬鹿」と評した通り、自分の好きなものにしか興味を持てず、一旦関心を持つとそればかりになるタイプです。そんな中初めて「好きな人」という存在を持ってしまった北嶋は、恋心に暴走してしまいます。当初の言動から怠惰で軽薄なイメージの北嶋ですが、根は真っ直ぐなので恋をするとどこまでも一途。なりふり構わず、とにかく牧田に振り向いてほしい一心で何でもする北嶋は健気で子供っぽく、頭を抱えたくなるようなことばかりしでかします。この、恋に溺れて後先考えられなくなる感じは初恋特有の甘酸っぱさを感じました。牧田の反応に一喜一憂する北嶋は普段の姿から考えられないほどいたいけでいじらしく、巧みな心理描写に感情移入してしまいます。そんな裏表も計算も一切ない、ある意味すごく純粋な北嶋にほだされて牧田も想いに応えます。
    北嶋の実は素直なところと恋に落ちて幼くなるギャップは、悪い方の人間性まで可愛くなるほどでした。これだけ可愛かったらゲイでなくても落ちてしまうと納得できるのがすごいです。ほだされる形で付き合った牧田ですが、やがて牧田の方が北嶋にはまってしまって溺愛するようになり、北嶋も人徳の高い牧田に応えるために自身の人格を磨くようになったらいいなと思いました。
  • 上海金魚

    かわい有美子

    恋愛映画のようにロマンティック
    ネタバレ
    2022年8月7日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 描写が美しく繊細で、耳を澄ませば異国の喧騒が聞こえ、美味しそうな料理の匂いが漂い、運河に柳が揺れる幻想的な風景が脳裏に映し出されるようでした。タイトル通り物語の大半は上海が舞台で、短い数日間の出来事です。異郷の地を巡りながら登場人物の心情が移り変わっていくのと同時に、だんだんと2人の距離も近づき惹かれあっていくさまは、夢の中のようなゆったりとした空気を感じました。異国で見た夢は日常に戻ることで覚めるかと思われますが、上海での美しいひとときは2人の胸に余韻を残し続け、静かに恋情は育っていきます。
    登場人物の設定が緻密で、特に主人公の水端は奥が深く魅力的でした。元々の繊細で感受性の強い気質に加えて、自らの性的指向を否定されることへの怯えからより臆病で潔癖になっていた水端は、いつもどこか警戒感を抱いていて、自分の生活を守るように保守的に生きていた印象があります。その固く凝った心を、自由奔放な滝乃がその器の広さを持ってゆっくりとほぐしていくストーリーは何とも感傷的でロマンティックでした。眼鏡を外すと美人だったり、一度は別れた2人が運命的に再会を果たしたりするところは、現実感がなくまるで少女漫画のようですが、全体的に漂うドリーミーな雰囲気にぴったり合っていると思います。
    水端は恋に一途で感覚的というか乙女っぽいところがあり、モノガミーとポリガミーという恋愛価値観の違いから付き合っていた伊藤に裏切られ傷つけられます。植物的な印象の下に潜む愛情深い気質こそが水端の人間味で、それが彼の時たま滲み出る色香なのかもしれないと思いました。滝乃は掴みどころがなく時にはドライな人物ですが、ロマンチストで愛に満ちた一面もあるので、水端を甘やかして可愛がって、天涯孤独の彼の大切な存在になってほしいと思います。
    普段あまり読まないタイプの乙女チックなBLですが、情景や心情が美しく描かれていて感慨深かったです。
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  • 掌の花

    宮緒葵/座裏屋蘭丸

    互いが互いに手放せない花
    ネタバレ
    2022年7月29日
    このレビューはネタバレを含みます▼ タイトルである「掌の花」の意味が練られていて良かったです。聡介と菖蒲、両者にとって互いが「掌の花」。その上菖蒲にとってのそれは、聡介のそれより格段に強い執念と、昏い支配欲求が込められていることに背筋が震えました。
    シリーズ前作の「掌の檻」と構成は似ていますが、登場人物の個性によってまた異なる雰囲気となっています。前作では、数馬は雪也に囲い込まれ2人で堕ちていくところまで描かれましたが、今作ではまだそこまで至らない平和な状態で終わるので、いずれ聡介が堕ちきるだろう未来が想像できるだけ恐ろしさが増します。菖蒲にとっては人生をかけた長期計画ということでしょうか。
    そして、前作の執着攻め・雪也は家庭環境など後天的要因が人格の歪みに拍車をかけた節がありますが、今作の菖蒲はその出自も特異ではあるものの、境遇にはさほど影響を受けておらず、先天的に歪んだ気質が関係していそうです。雪也が不遇のソシオパスならば、菖蒲は生来のサイコパスでしょうか。一見すると典雅でありながら心の内に激しい嗜虐心を秘める様は、ハイコンテクストな京都弁とも相まってより一層の狂気を感じさせます。そんな、ギャップに溢れた菖蒲の独自が際立っていて魅力的でした。聡介は堅物という設定のわりに男性同士の恋愛や受け入れる側になることへの抵抗が少なく、意外にすんなりと菖蒲に籠絡されてしまった印象ですが、それも菖蒲の放つ妖気とも言える色香のせいなのかもしれません。
    聡介の叔父の賢次郎もキャラが立っていて素敵でした。彼のエピソードももっと知りたかったです。
    そして何よりタイトルにも関わってくるテーマ、指フェチですが、美しい手の描写が多くあって嬉しいです。とても表現が多彩で、美しい手指とキーワードである「花」を絡めていたり、菖蒲の名前にも意味があったりして様々な伏線には脱帽です。
    濡れ場も切羽詰まった興奮が伝わってくるようで熱情的でした。作家さんの特徴なのか攻めの言葉遣いが柔らかく、言葉責めに幼い言葉を使ってくるのがいじらしいです。男前な受けに対して「俺だけの可愛い子」と呼ぶのがたまりません。
    前作から引き続き座裏屋蘭丸先生のイラストも素敵で、中性的な攻めの容貌がイメージ通りで心を射抜かれました。
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  • 【限定おまけ付き】 掌の檻

    宮緒葵/座裏屋蘭丸

    互いのみを糧に生きる愛
    ネタバレ
    2022年7月26日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 内容が濃く読み応えがあり、ずんっと内臓に響くような重みのある話です。恋愛カテゴリーに入れてしまってはいけないような、病的で不健全な執着愛。究極の愛の境地とでも言うのか、相手がいなければ生きていけない、強烈に狂った共依存の関係に圧倒されました。
    心情描写が細やかで、明かされていく執着攻めの闇にハラハラしながら読み進めていきます。順風満帆な人生を何不自由なく過ごしてきた受けの数馬が、愛に狂った攻めの雪也にじりじりと搦め捕られていき、ついには肉体・精神共に籠絡され堕ちていくさまがなんとも暗く狂気的です。一見すると「外面はハイスペックなイケメンだが、好きな相手に対してのみ愛が重くサディスト」みたいなわりと女性に好まれやすいありがちな設定ですが、この作家さんの場合その狂気の度合いが異常なので、全く異なる切り口で面白く読めます。
    愛情不足による母親への依存は雪也の人格形成に大きな影響を与えたと思いますが、重要だったのは生来の愛情深く内向的な気質だと思います。度重なる愛情の裏切りは元来多くの愛情を必要とする気質である雪也には耐え難く、絶望経験は心の内に闇を増殖させ、最終的に目的のためには手段を厭わないソシオパスを生み出してしまいました。しかしそれにしても、数馬がたった一度の裏切りを一生の罪とするには小さいのではないかな、とも思います。雪也の負ってきた痛みを共に背負おうとする数馬はこちらもやはり狂人で、ある意味お似合いの恋人なのでしょうか。ラストは好みが分かれるところですが、この歪な愛の形は最も彼らに相応しいと思いました。
    濡れ場はそこまで過激ではないものの、やや特殊です。食べる・食べられるという比喩だったり、体液に異常な関心を見せるところだったり、ハイグロフィリアみたいな感じもして色々と常軌を逸しています。
    個人的には雪也のキャラクター性や人物描写がとても好きでした。どこか退廃的な美しさを感じさせる容姿は、描写が文章に色香を漂わせています。度々出てくる「雪原の椿」という表現が、愛を欲して孤独に凍った雪也の心の永久凍土を表しているようで印象的でした。
    座裏屋蘭丸先生のイラストも美しく扇状的で、物語の世界を広げてくれました。
  • 【電子限定版】ルームメイト

    雪代鞠絵/中村明日美子/ラナ・マクレガー

    海外の空気感があって良いです。
    ネタバレ
    2022年7月4日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 大学生同士の恋愛で微笑ましいです。ホームパーティーやジャンクフードなど、海外を感じさせるところが多くあり新鮮です。
    キャラクターも魅力的。主人公のアダムは地味で大人しいですが実は芯が強く、自分を持っているところがかっこいいです。攻めのジョシュは一見すると完璧、爽やかで人気者のスポーツマンですが、自らの性的指向に悩んでおり、ゲイを周囲に明かせない弱さがあるのがアダムと対照的です。
    ストーリーは王道ですが、そこへSM要素が加わりドキドキする展開になっています。主人公がだんだんとSMの扉を開いていくところが細かく描かれていて、急展開ではないのでついていきやすいです。やっていることは本格的ですが、そこまで過激ではないので気負わずに読めます。
    終盤のパーティーのシーンで吹っ切れたジョシュがスポーツクラブの友達にゲイをカミングアウトするところは感動しました。
    人気者で華やかな攻めと地味で大人しい受け、両想い確定なのになかなか結ばれなかったり、ゲイをカミングアウトするのに悩んだり、国が違っても同じ部分も多いと感じました。
    SMのシーンは多いですが、描写はあっさりしているのでBL的な萌えとはまた異なります。
    海外小説は普段あまり読みませんが、翻訳も読みやすくすっと物語の世界に入っていけました。
    中村明日美子先生の絵も耽美で美しいです。
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  • 渇仰

    宮緒葵/梨とりこ

    かなり狂気でした。でも好きです。
    ネタバレ
    2022年7月2日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ページ数もですが、内容に厚みがありとても読み応えがありました。
    ただの執着愛だと思って読むと驚きます。達幸の明良への想いが常軌を逸していて、狂気じみた執着と異常すぎる達幸のキャラクター性に引き込まれます。
    本当に達幸がどうしようもないです。口では「俺は明良の犬だから」と言っていますが、犬なんて可愛いもんじゃありません。これはケダモノ。狂った獣を人間の明良がどう躾けていくかの話です。読んでいてふと、南総里見八犬伝の八房と伏姫を思い出しました。
    明良は常識を持つ普通の人物かと思われますが、実はすごい人格の持ち主です。達幸の狂った世界に呑み込まれながらも執着を愛に昇華させ、身も心も捧げることによって狂犬の手綱を握ります。器が広いというレベルではなく、達幸の狂気に真正面から向き合って己の全てを献身します。側から見れば2人ともかなりヤバイです。
    しかし飼い主である明良と飼い犬の達幸の主従関係は確立されますが、だんだんと明良は男の魅力あふれる達幸に籠絡され、精神的に繋ぎ止められていきます。もしかすれば本当に立場が上なのは犬である達幸の方かもしれません。
    辛い過去ゆえに、世界を色づけてくれた明良からの愛に飢える達幸は痛々しく、明良への執着は不健全な愛にも感じます。ここまで病的な執着を恋愛カテゴリーに一纏めにしてしまうのは危険かとも思いますが、これこそがある意味究極の愛の形なのかもしれない、とも思いました。
    俳優とマネージャーという職業らしく、芸能界ならではの描写も細かく描かれていてリアリティがありました。何より明良の犬である達幸の本性と、俳優としての外向きの顔のギャップが激しくて面白かったです。
    濡れ場は多く、少し過激で独特なので好き嫌いが分かれるかもしれません。完全にファンタジーです。
    達幸が明良の肉を本気で食べるシーンは2人の関係の異常性を前面に押し出していて、魅せられました。
    あと、個人的には達幸の笑い方がぐふふ、なのが何とも気持ち悪くて好きでした。
    苦労人の松尾さんなど他のキャラクターも素敵で、もっとエピソードを読んでみたかったです。
  • 灰の月

    木原音瀬/梨とりこ

    心に響く深い話でした。
    ネタバレ
    2022年6月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 上巻は決して振り向かない嘉藤に対して熱烈な片想いを続け、ほぼ狂ったように恋をする惣一が痛々しかったです。惣一のキャラクターがかなり独特なのもあり、見ていられない気持ちになります。
    下巻は筋者としての心意気を見せ、組員の心を掴んで活躍し、組長に上り詰める惣一が格好良かったです。段々と嘉藤の心も絆されていき、変化する嘉藤の心情に弄ばれる惣一は不憫でもありますが、2人の距離は縮まっていきます。ただ、ヤクザという職業に纏わりつく血生臭い抗争や面倒ごとに、惣一が巻き込まれて酷い目に遭っていくのは辛かったです。ですが手に汗を握るような緊張感があり面白い場面も多く、裏社会の世界がドラマティックに描かれていました。
    ラストは個人的には悲壮だと感じましたが、良いか悪いかで言えば良い結末だと思います。何処かで2人でひっそりと愛し合いながら生きていく、筋者の矜持に縛られて生きてきた2人にとって唯一の光であると思います。それまで惣一の愛を拒み続けてきた嘉藤に、今までその愛を跳ね返してきた分だけ、これから惣一をたくさん愛していってほしいと願ってしまいます。