きみにあげる。
」のレビュー

きみにあげる。

槇えびし

文学的

2011年9月1日
恋人に逃げられ、その借金を背負わされ、行き場もないまま彷徨うゲイの諒一。
元ヤクザで、閑古鳥の鳴く店と古い付き合いの律以外に寄る辺ない蓮。
そんな二人のお話。

……ちなみにサンプルの最初に出てくる可愛い顔の彼が諒一くん。28才(攻)です。


他ではちょっと見掛けない、端正な絵柄に惹かれて思い切ってパック買い。
始めから終わりまで淡々とお話が進むので、最初は物足りなく感じていたのですが、読み終わる頃には不思議な充足感を覚えていました。
一、二話読んだだけではこの作品のよさは分からなかったと思うので、パック買いして正解でした。

独特の絵柄は好みが別れそうではあります。
白と黒で表現された世界は墨絵のようで、確かにBLらしからぬ画風ではありますが、背景の細かいところまで書き込まれたとても美しい絵です。
背景フェチの私には堪らないものがありました。

回を追う毎に印象の変わる諒一の表情も秀逸。
ちょっとした台詞回しも上手い。
巧みという言葉の似合う作者さんだと思います。

絵柄、お話、キャラクター造形。
読み手に媚びたところのない作品なので、手っ取り早く分かりやすいBLが読みたい、という方には向かないお話かもしれません。
コマとコマの間さえ読みつくす勢いで、じっくりお話を楽しみたい方には是非オススメしたい作品です。

それにしても「きみにあげる。」ってとんでもない殺し文句だなあ。
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